中国科学院合肥物質科学研究院によると、同研究院の「人工太陽」と呼ばれる全超伝導トカマク核融合実験装置(EAST)が近日中に、新たなアップグレード改造を完了することになった。中心部の電子温度摂氏1億度、100秒長パルス化プラズマという科学研究の新たな目標に挑み、世界の制御可能な核融合エネルギーの研究を新たな高みに押し上げることを目指す。新華社が伝えた。
同研究院プラズマ物理研究所の王騰博士は「万物の成長に太陽が必要だ。EASTには太陽に似た活動メカニズムがあるため、『人工太陽』と呼ばれる。石炭、石油、天然ガスは将来的に枯渇する恐れがあり、ある程度の環境汚染が存在する。『人工太陽』の核融合反応に必要な原材料は、地球上でほぼ無尽蔵にあり、生成物にも危害はなく、理想的な究極エネルギーとされている」と述べた。
同研究院副院長で、プラズマ物理研究所所長の宋雲濤氏は「EASTは中国の重要科学プロジェクトだ。核融合エネルギーの開発に工学と物理実験の基礎を提供することが目標だ。完成後すでに9万6000回以上の実験が行われている。安定的な101.2秒の定常状態長パルス化ハイモードプラズマ活動、電子温度摂氏1億度・20秒のプラズマ活動といった国際的に重大なブレイクスルーを実現した」と説明した。
EASTは2020年7月より新たなアップグレード改造を開始した。先端材料、鍵となる部品、主要サブシステムなど一連の重要なアップグレードを行ってきた。中国科学院プラズマ物理研究所研究製造センター長の呉傑峰氏は「装置のアップグレードは技術的に難しく、多くの作業が必要だ。『人工太陽』は非常に複雑で、摂氏1億度ほどの高温と氷点下269度の低温を1メートル内で共存させなければならず、部品は1万点ほどにのぼる。ほんの小さな瑕疵があっただけで、将来の実験が失敗する可能性がある」と述べた。
中国科学院プラズマ物理研究所トカマク物理実験研究室室長の龔先祖氏は「摂氏1億度を20秒から100秒にするのは大きな技術の飛躍であり、人類の核融合エネルギー研究を新たな高みに押し上げる。アップグレード改造作業は現在順調に進んでおり、4月末の終了を見込んでいる。摂氏1億度・100秒の新たな目標に向かいスパートをかける」と述べた。(編集YF)
「人民網日本語版」2021年3月26日