今年の全国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)では、「デジタル人民元」がホットワードの1つになった。昨年からは、中国の複数の都市でデジタル人民元の試行テストも相次いで行なわれている。現時点では、デジタル人民元の利用では招待制が中心だ。試行テストが安定的に進められるのに伴って、神秘のベールの向こうにあったデジタル人民元の姿が徐々に明らかになってきた。新華社が伝えた。
デジタル人民元が実際に利用されるシーンを見てみると、最近は上海市地下鉄駅構内にある「黒拾」スマート自動販売機がデジタル人民元での支払いに対応するようになった。商品を選び、デジタル人民元を支払い方法に選び、QRコードを読み取ると商品が出てくる。
オフラインシーンだけでなく、デジタル人民元はさまざまなオンラインルートでも利用できる。現在、デジタル人民元のアプリケーションは滴滴出行、美団騎車、京東など複数のサブウォレットでの応用に対応している。
デジタル人民元で支払うのは、微信(WeChat)や支付宝(アリペイ)で支払うのと何が違うのか。上海交通大学上海高級金融学院(SAIF)の胡捷・実践教授は、「デジタル人民元は法定通貨だが、微信とアリペイは第三者決済ツールであり、両者は次元が違う」と述べた。
デジタル人民元にはどのような優位性があるか。安邦諮詢の魏宏研究員は、「デジタル人民元には取引コストを引き下げ、信用情報収集の効率を引き上げ、決済の利便性を強化するという効果がある。幅広く応用されるようになると、中国の金融政策のためにより透明性を備えた直通型のツールを生み出すものになると期待されている」と述べた。
人民元の現金が電子化した後も紙幣は流通し続けるのだろうか。胡氏は、「中国人民銀行(中央銀行)のデジタル通貨は現金の一部の代わりになるだろうが、完全に紙幣に取って代わることはない。特に高齢者層には引き続き紙幣へのニーズがあり、紙幣には匿名性などの特徴も備わっている。そのため予見可能な将来において、デジタル通貨と人民元の紙幣・硬貨は長期的に共存することになるだろう」との見方を示した。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年3月24日