海外の教育状況と文化の違いを考慮に入れ、現地の教師と共同編集
范氏は、「英国版は中国版を単に翻訳したのではなく、編訳したもの。他の図書と比べると、テキストは読者の地域性やカリキュラムの違いなどの要素を考慮に入れなければならず、著作権をめぐる問題も多い。編訳者は、中国の数学教育の状況だけでなく、英国の状況について把握していなければならず、英国の国家数学カリキュラム基準の各学年に対する教育指示、学生の生活背景、中国と英国の文化、言語の違いをクリアさせなければならない。英国版の出版に向けて、出版社は英国の大学教師十数人を招き、中国の専門家と共に翻訳と改編作業を行った」と説明する。
浙江教育出版集団は、マレーシア向けの科学教材編集の際に、同様の過程を経験した。その教材は、現地で以前使われていた教科書と比べると、内容がほぼ一新されている。マレーシアの中学校の科学の授業時間は中国より多く、教材が取り入れている内容ももっと幅広い。そのため、同集団のすでに成熟している科学教材をそのまま翻訳するだけというわけにはいかない。12年、同集団が派遣した教材編集チームはマレーシアの中国語独立中学(Sekolah Menengah Persendirian)で授業を見学し、教育の状況や実験の環境などを調査した。そして、マレーシア中国語学校理事連合会総会とマレーシア中国語学校教師会総会(略称:董教総)の責任者やマレーシアカリキュラム基準グループのメンバーらと何度も話し合い、最終的に教科書6冊の編集の枠組みと細目を定めた。
教育資源と方法の共有が一般的な流れに?
アマゾン(英国)の「ザ・シャンハイ・マス・プロジェクト」を販売しているページには、「うちの息子はいくらやっても数学の成績を上げることができないと言う人もいたけど、今日、魔力を持つこの数学テキストを手に入れた。息子はあっという間に5ページも勉強した。本当に奇跡だ!この教材シリーズを使って、本当に良かった。今後、他の数冊も必ず買う」との声が寄せられている。
テキストだけでなく、教育理念や方法も海外進出している。浙江省温州市教育局教育研究室元主任の余自強氏によると、教材を編集する際、マレーシアの中学の総合科学カリキュラム基準を満たしただけでなく、中国の伝統文化、現代科学教育理念も盛り込んだ。「ザ・シャンハイ・マス・プロジェクト」の原稿審査に参加した英国のある専門家は、「中国と西洋の教育は違いがあるだけで、どちらが勝っているということはない。教育資源と方法を共有し、融合させてより良いものを作るというのが今後の流れになるだろう。英国にとって、優秀な外国の要素を学校に取り入れるというのは決して今に始まったことではなく、今後も『一課一練』のようなケースが増えるだろう」との見方を示す。
中学校の科学教材の編集が成功したため、マレーシアの「董教総」は引き続き浙江教育出版集団に、高校の物理、化学、生物の教科書を委託し、中学校と高校でつながりのある理科教育体系を構築したい考えだ。高校1年の物理、化学、生物の教科書はすでに出版され、今年1月から中国語学校で採用されるようになった。今年の年末、アフリカでフランス語が公用語のマリとカメルーンでも、全国の小学校で同集団が出版したフランス語の数学教材が採用される計画だ。その他、同集団が編集した中国語教材「ニーハオ、カメルーン!」も16年に、カメルーンの国民教育体系に盛り込まれている。
華東師範大学出版社の王焰社長は、「テキストでも、教材でも、他の出版物であっても、一番大切なのは中国の発展がもたらすチャンスをつかみ、他の国や地域の主流社会に受け入れられ、青少年の成長のために本当の意味でサポートを提供することだ。現地に認められなければ、海外進出はできない」との見方を示す。(編集KN)
「人民網日本語版」2018年6月29日
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