安倍政権と自民党が安保法案の採決を強行したのを受け、日本が軍事的な動きに乗り出すのではと多くの人が心配している。だが筆者は、これにはまず、日本の目下の財政力が十分な支えを提供できるかが問題となると考えている。環球時報が伝えた。(文:馮昭奎。中国社会科学院名誉学部委員、中国中日関係史学会顧問)
1990年代以来、日本の財政状況は20年余りにわたって悪化を続け、日本経済の抱える難病となっている。今年4月の国際通貨基金(IMF)の統計によると、日本の国債務残高がGDPに占める割合は2014年、統計対象の183カ国中ワースト1位の246.42%に達し、財政危機に陥ったギリシャ(177.19%)、債務の大きさから政治的危機が起こったイタリア(132.11%)、米国(104.77%)、英国(89.54%)などをいずれも大きく上回った。
歴史的に見ても、第2次世界大戦後の英国の債務残高の対GDP比でさえ240%、日本の第2次世界大戦末期のそれも204%にすぎない。日本の目下の財政難の深刻さが史上まれに見るものであることがわかる。これほどの財政負担を抱える安倍首相が、日本を「戦争のできる国」に変えようというのは、自己の限界をわきまえないものと言わざるを得ない。
日本は長年にわたって、世界で負債の最も大きい政府の一つであり続けてきた。財政危機の出現を避けるため、歴代政権はいずれも、財政・税務改革措置を打ち出し、財政の再建と改善をはかったが、その効果はわずかなものにとどまってきた。ある日本の学者は、日本の財政再建が失敗してきた本質的な原因は予算制度の欠陥にあり、日本の財政苦境を克服するには予算制度や公務員制度、社会保障制度の改革が急務であると指摘している。日本の財政が苦境に陥っている最も根本的な原因は、政治家から官僚、日本国民に至るまでの、長期にわたって改革を回避してきた態度にあるとの指摘である。だがこうした状況にもかかわらず、2012年の第2次安倍政権発足以来、予算制度などに対する本当の改革は引き続き避けられ、2002年度から10年にわたって増えていなかった日本の防衛費は3年連続で増加し、2016年度は前年から3.5%増加して初めて5兆円を突破し、過去最高を更新した。安倍政権はいわゆる「安保改革法案」を強力に推し進め、国会での採決を実現した。日本では安保法案に賛成する人も反対する人も、安保法案の国会での正式な決議を受け、自衛隊の活動範囲は拡大し、防衛費もこれに伴ってさらに膨脹すると予想している。日本政府の財政局面はさらに厳しさを増すと考えられる。