厚生年金、減る積立金 来年度末100兆円割れの見通し
【松浦新】サラリーマンが入る厚生年金を支払うための積立金が減り続けている。将来の年金を支払うには約120兆円必要な計算なのに、積み立てている年金保険料の収入が減り、来年度末には100兆円を割る見通しだ。このままでは、いずれ保険料を引き上げたり年金給付額を引き下げたりしなければならない。
厚生年金は小泉政権時代の2004年、「100年安心の年金制度」をつくるとして、保険料率などが見直された。サラリーマンと企業が半々で支払う保険料率(給与に占める割合)を毎年0.354%上げることで保険料収入を増やし、10年度以降、積立金を増やしていく計画にした。
しかし、04年度末には約138兆円だった積立金は減り、10年度以降も毎年5兆円前後ずつ取り崩している。毎年の年金支払額より、毎年の年金保険料収入が少ないからだ。厚生労働省は12年度に約6兆円、13年度に約5兆円を取り崩そうとしており、13年度末の積立金は約98兆円になる見通しだ。
もともと04年の見直しでは、保険料収入が伸びて13年度末の積立金は約158兆円に増えるはずだった。ところが、保険料収入は伸びず、厚労省は09年の検証でこの見込み額を約141兆円に引き下げた。
さらに、実際の積立金は09年の見込み額も大きく下回っている。見込み額には厚生年金基金が預かって運用している積立金なども25兆円ほど含まれているため、これを差し引くと、実際の積立金は見込み額より20兆円近く足りない。
保険料収入が伸びないのは、現役サラリーマンの給与が減っているからだ。厚労省の見込みでは、11年度の給与が09年度より6.2%伸びているはずだったのに、08年秋のリーマン・ショックで景気が悪化して実際は3.6%減っていた。
このまま毎年5兆円前後ずつ積立金を取り崩すと、20年ほどで積立金がなくなる。これを防ぐには、保険料率をもっと引き上げるか、年金の給付額を減らしたり支給開始年齢を上げたりしなければならない。
今の保険料率は給与の16.766%(社員と企業の合計)で、最終的には17年に18.3%まで上がる予定のため、さらに上げると現役世代の負担が重い。このため、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)は年金給付額を人口減などに応じて減らしていくことなどを議論している。
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〈厚生年金〉 公的年金のうち民間サラリーマン向けで、2011年度末で3451万人が入る。老後に受け取る年金には、「基礎年金」に現役時代の収入に応じた「報酬比例額」が加わる。中小企業などが保険料の一部を預かって運用している「厚生年金基金」もあり、443万人が入る。公的年金はほかに自営業者などが入る「国民年金」、公務員が入る「共済年金」がある。
asahi.com 2012年12月26日
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