「肥満は昇進の妨げ」 高まる日本人の健康意識
「今年こそ部長に昇進にできるかもしれない」と密かな期待を抱いている大江恒一さん(音訳)は、ある日突然、人事部から通達を受けた。45歳になる大江さんは、20年間、パナソニック本社で仕事をしてきた。彼の過去の業績から見て、今年部長に昇進しても何ら不思議はない。しかし、今月初め、予想だにしなかった通達を人事部から受け取った。通達には、「3カ月以内に減量を成功させること。さもなければ、部長昇進の道は断たれる。6カ月以内に標準体重に戻すことができなければ、退職を命じる」と書かれていた。生命時報が報じた。
通達を読んだ大江さんの落ち込みぶりは激しかったが、会社を恨むことはできない。45歳の彼は、身長178センチメートルに対し、体重は95キロと、確かに「肥満」だ。しかも、大きく突き出たビール腹の腹囲は120センチもある。会社からの通達は、法律に準じたものだ。日本政府は2008年、地方自治体と企業に対して、年齢45歳から70歳の従業員に対するいわゆるメタボリックシンドローム(メタボ=内臓脂肪症候群)検診を毎年行うことを義務付け、腹囲の基準値を、男性85センチ未満、女性90センチ未満と定めた。この基準値は、国際糖尿病連合が2005年に定めた基準で、健康を脅かす隠れた危険因子の有無を判定するガイドラインとなっている。
世界トップの高齢化社会である日本では、政府財政が負担している高齢者の糖尿病・高血圧・循環器疾患関連医療費は巨額に上り、日本社会は大きな負担を強いられている。このため、日本政府は、40歳以上の社員の「適正体重」を維持する責任を企業側に負わせ、企業もそれに従うしかなかった。厚生労動省は、体重のほか、腹囲が基準値を超えている人に対しても、血糖・血圧・コレステロール値の検査を義務付けた。このうち1つでも基準値をオーバーした人は「メタボ予備軍」、2項目以上で基準値をオーバーした場合は、「メタボ有病者」と判定される。彼らはいずれも、3カ月以内に自主的な減量を行わなければならない。減量に失敗した場合は、指導を受けて食事制限を行う。6カ月経過しても引き続き体重超過が見られる場合は、再指導を受けなければならない。
これらのメタボ対策は2008年にスタート、すでに約5年が経過した。日本のサラリーマンは、当初、「腹囲制限は人のアラ探し」とかなり批判的な反応だったが、今では「腹囲は仕事の業績と同じほど重要」と考えるまでになった。腹囲制限に対する見方が180度転換したのだ。さらには、日常生活を送る上でも、食事と運動に注意するようになった。日本のフィットネスジムでは、トレーナーが彼らにトレーニング指導を行いつつ、「贅肉と永遠にサヨナラしましょう!」と大声で叫んでいる。食料品店では、「新陳代謝を促し、脂肪蓄積を防止する」をセールスポイントとした食品が良く売れている。オムロンを始めとする体重計メーカー次々と、「体脂肪率測定」機能付き計器を売り出し、売れ行きは上々だ。大きなバックパックを背負って出勤するサラリーマンが増えている。バッグには、退勤後にジムに行って運動するためのウェアや脂質・糖分の吸収に配慮したサプリメントが入っている。さらには、「体脂肪測定計」と「食品カロリー計算器」という「2種の神器」も忘れてはならない必携ギアだ。「腹囲制限」の効果は著しく、日本人の健康意識がぐんと高まったことは確実だ。(編集KM)
「人民網日本語版」2013年5月15日