「家なし」「戸籍なし」・・・都会の若者が抱える孤独・焦燥感 中国
故郷を離れ、北京・上海・広州などの大都市に出て働く若者がますます増えている。彼らは、精一杯黙々と働いているが、心の奥底は決して穏やかではない。都会生まれの若者と異なり、地方出身者が大都会になじむ日はいつまでたっても来ない。たとえマイホームや自家用車を手に入れても、心の奥にある悩みは完全に消失することはなく、彼らの焦燥感は蔓延する一方だ。生命時報が報じた。
近く結婚する予定の王さんは、最近ますますイライラが募っている。王さんとフィアンセの女性はともに、広州に戸籍がないため、広州で結婚証明書を受理することができない。経済適用住宅(低所得者向けの廉価住宅)や廉価賃貸住宅が申請できないことは言うまでもない。将来子供が出来た場合、大学・大学院進学などの学校問題や就業問題にも頭を悩ますことは目に見えている。王さんは、広州に住んで12年になるが、この大都市の華やかさやにぎやかさは、自分とは一切関係がないという事実に、今改めて気がついたという。「朝の出勤時から、小さなパニック感に襲われます。自分がどうすれば良いのか全く分からず、結婚も今は棚上げの状態です」。
河北省出身の李さんは、10年間北京で必死の思いで働き、北京戸籍を手に入れ、マイホームもマイカーも手に入れた。傍から見ると、彼の願いは全て実現したように見える。しかし、「ハード面」での条件が全て満たされた後も、李さんは深い焦燥感を覚え、自分が北京人であるという帰属感は少しも感じられないという。「ここで毎日普通に生活していますが、生粋の北京人からは、意図的・無意識にかかわらず、『外来者』と見なされます。自分が何者なのか分からないという『アイデンティティーの喪失』は、物質的なもので補うことはできません」と李さんは語った。
同じような状況に置かれている若者は非常に多い。20歳から40歳の都市の「漂族(都市戸籍を持たずに都市で暮らす外来者)」を対象とした調査の結果、9割の人が「胸中は焦燥感で一杯」と答えた。焦燥感を感じる理由として、「孤独感や寂しさを感じる」「帰属意識がない」「アイデンティティーが欠落している」「自分が成長する活路を見いだせない」などが挙げられた。一方、焦燥感が生み出される背景には、次のような客観的事実も存在している。