記者らが徐さんらの思い切った投資に舌を巻いていると、徐さんは「『投機家』とも言えるけど、『房奴』でもある。『房奴』だった頃は苦しい生活を余儀なくされ、非常に大きなストレスを抱えていた。投資に失敗した人もいくらでもいる。ローンの返済ができずに、利益が出る前に、住宅を売却してしまった人もいるし、意見の食い違いから離婚した夫婦さえいる。私も、十数件の住宅のうち私名義のものは一部だけだったが、ローン返済のストレスでめいっていた。生活費を除く毎月の收入すべてをローン返済にまわしていた」と隠れた苦労を語る。
徐さんらにとって、中国政府が打ち出す不動産投資抑制政策も負担の種になった。「不動産転がし」をする人は1千万元(約1億2千万円)の資金が手元にあれば、銀行のローンを利用して不動産を購入し、さらに担保ローンを利用してさらなる資金を手にすることができる。その資金を使って、再び不動産を購入し、また担保に利用するという手法を繰り返して、投資規模を1億元(約12億円)程度にまで膨らませることができる。ただし、それには大きなリスクも伴う。中国政府は05年、「個人が住宅を購入し2年以内に転売した場合、転売価格全体に対し営業税を課税する」という不動産投資抑制政策を実行。06年には2年という制限が5年に調整された。これにより、不動産投機に必要なコストは急激に増加。不動産市場は低迷することになり、徐さんらのように「不動産転がし」をしていた人にとっては致命的な打撃となった。
「買う時は値上がりすることしか頭になく、値下がりするなんて思ってもみなかった。でも、05-06年にかけては、赤字でも不動産を売却しなければならない人がいた」。当時、周囲の人が借金返済のための資金繰りに奔走し、泣く泣く不動産を手放さなければならなかった様子を、徐さん今でも鮮明に記憶する。
「私たちも何件か売却することを考え、約100平方メートル(約30坪)の住宅を売りに出した。60万元(約720万円)で購入した物件だったが、売り出し価格は80万元(約960万円)。多少の値段交渉にも応じるつもりだった。利益に関しては、赤字にさえならなければいいと思っていた。でも半年経っても、買い手は見つからなかった」。
不動産投資抑制政策が実施されて以降、徐さん夫婦は北京の経済技術開発区である燕郊にある別荘を老後用に一件購入したといい、政策的に問題さえなければ、今後も不動産投機に投資したいという。その理由は、「安定していて、もっといい投資ルートがないから」。
一方、北京中原地産(不動産)市場研究部の張大偉・総監は「03年ごろの不動産購入者を『房奴』と呼ぶことはできない。なぜなら、当時の不動産価格の絶対値は低く、価格は健全な状態で、賃貸価格と販売価格の比率も合理的だった。不動産を貸し出せば、毎月のローン返済に困ることはなかった。また、個人収入も継続的に増加し、これら購入者の負担はさらに小さくなった」と指摘する。
「不動産転がし」という行為に関して、業界関係者は、「購入やローンに制限を課す政策により、新たな投資や投機が抑制されている以外に、今後、不動産税の導入などの手段を通して、投機のコストを上昇させ、『不動産転がし』をも抑制しなければならない。研究では、不動産の税率が平均1ポイント上昇すると、不動産所有率が5-6ポイント低下することが分かっている」との見方を示す。(編集KN)
「人民網日本語版」2012年11月23日
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