江蘇省南京市にある東南大学の学部新入生約4500人が間もなく受け取る合格通知書には、学生カードを入れるパスケースが付いている。そのパスケースには雲南省楚雄彝(イ)族自治州南華県の刺繍職人たちが、一針一針丁寧に縫い上げた美しい模様がデザインされている。これは1千年以上の歴史を誇る彝族の伝統的な刺繍「彝繍」だ。人民網が報じた。
南華県至善彝繍館の刺繡職人兼デザイナーで、東南大学の合格通知書の刺繡に携わった女性・陳さんは、「パスケースの模様は3種類。南華県の特色を備えた花、動物、地理的位置などをモチーフにしている。1つのケースを縫い上げるのに、2-3時間かかる。全てが手作りで、世界に一つしかない」と話す。
彝繍は、中国の伝統的な刺繍工芸で、多種多様な図案や色彩があり、独特の雰囲気を漂わせており、中国の国家無形文化遺産にも認定されている。関係者は、「彝繍は大胆な色使いが特徴。南華県ならではの工芸品で、多くの女性は刺繡で生計を立てている。しかし、このプロジェクトは、収入だけでなく、自信や価値観ももたらしている。東南大学の全ての新入生が大学でしっかりと勉強し、たくさんの知識やスキルを身に付け、前途洋々で、将来事業に成功して欲しいという思いが込められている」としている。
糸作りから、それらを使って華やかな刺繡を縫い上げる南華県の彝繍の売上高は年間数千万元(1元は約19.3円)に達している。また、現地の女性や障がい者などが自宅で、彝繍を仕事とすることができており、一般的な刺繡職人の月収は平均2000元ほどで、優秀な刺繡職人の場合は4000元以上となっている。
この無形文化遺産を伝承し、発揚すべく、現地政府は近年、上海や福建省と雲南省の協力を活用し、イノベーションを堅持し、海外や国内での提携やオンライン・オフラインといったスタイルで、彝繍産業の拡大をバックアップしている。一針一針丁寧に縫い上げられる美しい刺繍が、農民の増収や農村の振興をバックアップしているほか、さらに幅広く、スタイリッシュな大舞台で活躍するようになっている。(編集KN)
「人民網日本語版」2023年7月17日