福建省南部や東南アジア諸国では年末になると、お香を使うことが多くなる。お香販売が間もなくピークを迎えるため、連日青空が広がる福建省泉州市永春県達埔鎮では各お香工場の作業員が、お香の天日干し作業に勤しんでいる。人民網が報じた。
天日干しされたお香。
「永春漢口神香」とも呼ばれる「永春香」は、中国国内外で有名なお香だ。統計によると、世界のお香の3本に1本は、永春県達埔鎮産となっている。
原材料を作る「永春香」の製造技術の伝承人・蒲良宮さん。
心安らぐ香りのお香は、昔から多くの人々に愛されてきた。史料の記載によると、古代中国では、お香をたくことは、「気高く優雅なことトップ10」のトップに挙げられている。
特に宋(960‐1279年)、元(1271‐1368年)の時代、知識が豊富で、素養が高い人たちは、「お香なしに集まることはできない」と考えてさえいた。その時代に、「海のシルクロード」を通じてアラブ諸国からはるばる伝わってきた香料が、中国の伝統的なお香文化を誇る福建省永春県と「出会った」。そして、清(1636‐1912年)の時代の初期に、この2種類のお香が融合し、心が華やぐ独特な香りのお香が誕生し、これまで代々伝えられてきた。
お香の重さを量る蒲良宮さん。
ここ約300年の間に、独特な「永春香」の製造技術が確立され、2021年には第5陣の中国国家級無形文化遺産リストに登録された。永春は、厦門(アモイ)、広東省新会区、河北省古城と並んで、「中国4大お香生産拠点」とされている。
「永春香」の製造技術の伝承人である蒲良宮さんは、泉州市に住むアラブ人の末裔だ。蒲さんの先祖はアラブの香料を売る商人で、明(1368‐1644年)の時代の末から清の時代の初期の時代にはすでに泉州市に定住していた。1646年、蒲氏一族は晋江市東石鎮から永春県達埔鎮漢口村に移転し、アラブのお香製造技術と中国伝統のお香文化を融合させ、改良を重ねて「永春香」を生み出した。その製造技術は代々受け継がれ、蒲さんで10代目となる。
お香を作る蒲良宮さん。
蒲さんは、数百年前の先祖から受け継がれてきた製造技術を踏襲しており、製造器具も100年前から引き継がれてきたものを使っており、中には150年以上使われているものまである。
蒲家では、5歳になると香料に触れ、9歳になると香の作り方を学ぶ。各世代の人々が基本的にそのような順序で技術継承の道を歩み始める。
蒲さんによると、上等のお香を、短期間の間に作り上げることはできないという。中には、二代、三代にわたって試行錯誤を繰り返し、やっと作り上げることのできた傑作のお香もあるという。
「お金を儲けられるかに関係なく、代々伝わる技術を受け継いでいかなければならない。これが先祖代々伝えられている理念」と蒲さん。
天日干しされたお香。
永春県文化館の責任者・周梁泉氏によると、永春香の製作技術には、省、市、県の三級の無形文化遺産伝承人が20人いる。近年、伝統的なお香の製造技術を守り続けるのと同時に、「永春香」関連の新商品開発も強化し、お香業界・市場の多元化を促進し、産業の力強い発展をサポートしている。
永春県は80ヘクタールの中国香都香品産業パークを設置し、お香メーカー約300社が入居し、重点メーカーの年売上高はいずれも1億元(1元は約17.95円)に達している。お香業界の従事者は3万人で、商品の種類は300種類以上に達し、欧米諸国や東南アジア諸国に輸出されている。2020年、同県のお香産業の生産額は102億元に達した。
永春香産業パーク
第14次五カ年計画(2021‐25年)期間中、「永春香」産業は、「第一、二、三次産業」融合の要求に基づき、お香産業発展の優遇政策を打ち出し、香料やエッセンシャルオイルといった芳香産業を研究開発し、お香産業の発展クラスターを形成したい考えだ。そして、2025年をめどに、お香産業クラスターの生産額を150億元以上にまで引き上げたいとしている。(編集KN)
「人民網日本語版」2021年11月29日