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3Dプリンティング技術はインクで紙の上に内容を印刷するのではなく、三次元空間で層を積み上げて立体的なモノを作るというものだ。この新興技術が中国の医療分野での応用を加速させつつあり、利用シーンが日増しに拡大している。複数の病院で術前計画、手術フレーム、インプラントなどへの応用がすでにスタートした。新華社が伝えた。
3Dプリンティングは付加製造(AM)とも呼ばれ、デジタル模型に基づき、3次元で何層にも渡って堆積させ、材料から立体的な実体ある構造物を作成する、革新的な製造技術のことを指す。現在、世界では金属3Dプリンティング、高分子材料の3Dプリンティング、セラミック3Dプリンティング、バイオ3Dプリンティング技術に発展している。
中国全土の複数の病院で3Dプリンティング技術がすでに応用されている。北京大学第三病院、北京積水潭病院、上海交通大学医学院附属第九人民病院、浙江大学附属第一病院、広東省人民病院、南方医科大学第三附属病院などでの応用事例がある。
3Dプリンティング技術の医療現場での運用は、難易度と深度に基づいて4つのレベルに分かれる。(1)術前計画と術前シミュレーション(2)手術フレームとリハビリ用装具(3)整形外科のマッチングとインプラント(4)人工臓器のプリンティングの4種類だ。現在、世界では人工臓器のプリンティングはまだ初期の模索段階にあるが、他の3つは中国でさまざまに応用されている。
術前計画と術前シミュレーションでは、南方医科大学基礎医学院の教授で広東省医学生物力学重点実験室の室長を務める黄文華氏は、「従来のCTやMRIなどの画像診断検査の結果で出てくるのは2次元データで、経験豊富な医師でも複雑なケースは正確に把握するのが難しい。データを利用して3D実体模型を作成すれば、医師は直観的に、立体的に病変の解剖学的位置を知ることが出来る」と説明した。
先天性心疾患の手術を例にすると、患者一人一人の状況が異なり、これまでは手術時間の3分の1は医師が病状の観察と判断に当てられ、正確に把握できていない場合、他の医師に立ち会いを依頼することもあった。3Dプリンティング技術を利用すれば、手術前に患者の心臓模型をプリントアウトし、前もってしっかりした手術計画を立てられるようになる。
広東省人民病院心血管医学3Dプリンティング実験室の医師の荘健氏は、「病状の診断から手術計画に至り、さらには手術中の確認作業まで、3Dプリンティングは医師に大きなサポートを提供し、手術時間も短縮して、治療の成功率を高めた」と述べた。
手術フレームとリハビリ用装具について、南方医科大学第三附属病院の院長で広東省整形外科研究院運動医学研究所の所長を務める蔡道章氏は、「障害の程度が重度な患者は手術の位置合わせが困難だが、3Dプリンティングで手術フレームを作成すれば位置情報を正確に把握することができる。骨に欠損があるケースでは、3Dプリンティングで患者に適した材料で欠損部分を修復することができ、補装具による固定がより安定する」と説明した。
前出の黄氏は、「3Dプリンティング技術は整形外科インプラントでの応用が突出している。さまざまな骨格の特徴に基づいて患者に合ったインプラントを作成することが可能になり、標準化された整形外科インプラントでは患者との高い適合性を実現するのが難しいことでインプラントの機能が制限されやすい、生物力学的効果が十分に得られない、インプラントの寿命が短いといった問題を回避できる」と説明した。
ここ数年で3Dプリンティングの医療業界での運用は加速したが、技術の成熟度、社会の認知度、価格の受容度などの面では改善が待たれる。
世界医師会中国総代表の時占祥氏は、「3Dプリンティング技術とその製品は世界では臨床分野ですでに幅広く応用されており、整形外科、小児科、胸部・心臓血管外科、血管外科、放射線科、腫瘍科などで応用が進んでいる。業界の予測では、数年以内に3Dプリンティング技術はハードウェア、サービス、材料の各方面で市場が爆発的発展期を迎えるという」と述べた。
複数の業界関係者が、科学研究投資を拡大し、人材育成の取り組みを強化して、3Dプリンティング技術の医療業界での幅広い応用を推進することを提案した。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年11月25日