「盲盒(ブラインドボックス)」はもともと、アニメや漫画のグッズとして誕生した。複数のメーカーが、アニメ・漫画あるいは映画テレビ作品関連のキャラクターや独自にデザインしたフィギュアを、中身が見えない箱(ブラインドボックス)に入れて販売した。「盲盒」に入っているフィギュアは、販売価格とほぼ同じ価値のものもあれば、その価値が伴わないものもあり、運任せの要素が大きい。重慶晩報が伝えた。
12月11日、「盲盒のはしり」と言われている泡泡瑪特(POP MART)が香港証券取引所で上場した。上場初日はIPO価格から100%以上上がり、人々の注目を集めたのと同時に、「この勢いは、『盲盒』マニアたちが貢いだ金と切っても切り離せない」と指摘する人もいた。
〇「幸運」と切り離せない「盲盒」
ある程度の年齢に達している読者の中には、「盲盒」についてあまりよくわからないという人も多いかもしれない。しかし、子供や若者にとって、「盲盒」はすでにトレンドの一つとなっている。なぜ人々は「盲盒」に惹かれるのか?その理由は、買って初めて中身が分かることにある。マニアは、こうした「不確実性」に魅了されていると言っていいだろう。
璞さん(女性、29歳)は、アパレルデザインの仕事をしている。「『盲盒』に出会ったのは2016年だった。当時、南坪万達広場で、Molly(モリー、ある『盲盒』フィギュアの名前)の巨大フィギュアを見かけた。そのフィギュアは、手に絵筆と画板を持っていて、すごく可愛らしかった。自分自身アートが専門なので、日常生活でも絵を描くのが大好き。Mollyを見た瞬間に、自分の分身のような感覚にとらわれ、咄嗟に、これと同じフィギュアを手に入れたいと思った」と彼女は振り返った。
2019年は、業界では「盲盒元年」と言われている。璞さんもこの年、盲盒を最も多く購入した。しかし彼女が盲盒を手に入れれば入れるほど、その悩みも増えていったという。
「ある時、私は、盲盒を2個続けて開けてみたところ、2個ともすでに持っているフィギュアだった。その瞬間、自分はとてもついていないと感じ、怒りの気持ちが生じた。そこで、また2個購入した。そのうち1つだけ、持っていないフィギュアが出てきた。結局、単価69元(約1100円)の盲盒を4つ買ったので、合計276元(約4400元)使ったことになる。しかしそのうち新しいフィギュアは1つだけ。あまりにも割に合わない」と璞さん。彼女は、そのうちだんだんと、盲盒の購入について理性的に考えるようになると同時に、すでに購入した盲盒を他のマニアと交換するようになった。
〇マニアは「無知の代価」を支払っている?
マニアは、ある種のものをコレクションする楽しみを得る代わりに、同じフィギュアを複数手に入れることになるという問題に直面することになる。その場合、2つの選択肢がある。1つは、オンラインで他のマニアと取引・交換することで、これで自分が持っていないものを補うことができる。もう1つの方法は、メーカーが消費者の定着度を高める手段として提供する交換サービスを利用することだ。
12月12日のネット大型セール「ダブル12」期間中、盲盒を販売している一部のプラットフォームでは、12個以上まとめて購入すると、重複したフィギュアは交換でき、購入者が同じフィギュアを抱えることが無いよう配慮したサービスを打ち出していた。
盲盒の購入を「無駄遣い」や「無知の対価」とする見方に対し、璞さんは、「盲盒を購入する時は、大抵楽しい気持ちを味わえる。例えば、ちょうど欲しかった『招き猫』のフィギュアを幸運にも引き当てた時はとても嬉しかった。それで本当に金運を招くことができたわけではないが、縁起物を手に入れたことで、当分は良い気分でいられるから」と、独自の見解を示した。
そして璞さんは、「ほとんどの人は、自分の好きな物事には喜んでお金を使うもの。盲盒もその一つに過ぎない。一部に非難の声が上がっているのは、盲盒がこれまでなかったものだからだろう。IPの価値や幸福度などの外的要因が盲盒にプラスアルファの価値を過分に与えてしまったため、一部の人には理解されにくいのかもしれない」と指摘している。
生理学的な観点から見るなら、ドーパミンやエンドルフィンというホルモンが出ることで、人は喜びや達成感を感じる。盲盒が持つ不確実性と意外性により、箱を開けたとき、これらのホルモンが特に多く分泌する。自分のお金で盲盒を買って快楽を追求する行為は、それほど非難すべきことではないだろう。ただ、盲盒を買うのは良いが、盲目的な消費には注意が必要だ。なぜなら、娯楽というものは適度であれば良いが、過度にふければ失うものも大きくなるというのが道理だからだ。(編集KM)
「人民網日本語版」2020年12月16日