ゲノム編集の「弾丸」がターゲットに命中しなければ、オフターゲット効果が生じ、がんなどの望ましくない遺伝子変異が生じる恐れがある。このリスクにより、人々はこの新たな技術手段を敬遠している。中国科学院神経科学研究所はこのほど、国内外の研究機関の研究者と協力し、「GOTI」と呼ばれる技術を開発した。この技術はゲノム編集方法がオフターゲット効果を生じさせるかを正確かつ高い感度で検査・測定し、ゲノム編集技術を安全地帯に向け一歩前進させている。科技日報が伝えた。
これまでもオフターゲット効果を検査・測定する多くの案が打ち出されていた。しかしマウスもしくは人の個体間の遺伝子には大きな差があり、ゲノム編集で生じるオフターゲット効果はこれらの差の中に埋もれてしまう。従来の検査・測定方法では、これらの差の中からどれがゲノム編集によって生じたオフターゲットであり、どれが個体そのものの差であるかを特定しにくかった。そのためゲノム編集ツールの安全性を効果的に判別できなかった。
GOTIは既存のオフターゲット検査・測定手段を覆した。マウスの胚を用いるところに、この実験の巧妙な点がある。受精卵が二つに分裂するとき、そのうち1つにゲノム編集を行い、赤い蛍光タンパク質でマーキングを行う。編集後、2つの細胞は分裂を続ける。マウスの胚が14.5日まで発育すると、赤い蛍光タンパク質に基づきゲノム編集細胞と編集を施されていない対照用の細胞を判別する。
この2つの細胞は遺伝的背景が完全に一致し、そしてポリメラーゼ連鎖反応を必要としないため、遺伝的背景の干渉を回避でき、同時に単一塩基の突然変異をはっきり表示できる。GOTIはそのため高い感度を持ち、数が極めて少ないゲノム編集オフターゲットも感知できる。
研究者はさらにGOTI技術を用い、塩基編集法「BE3」が大量のターゲット突然変異を起こすことを発見した。この発見により従来は「特に安全でほぼオフターゲットしない」とされていた単一塩基突然変異技術を見直し、ゲノム編集ツールの安全性の評価に画期的な新技術をもたらした。これは新たな業界内の検査・測定基準になりうる。関連研究結果は1日、サイエンス誌に掲載されている。(編集YF)
「人民網日本語版」2019年3月1日