中国とASEANの「海上合同演習2018」が22~28日、広東省湛江市及びその東部海空域で実施された。演習は港・岸活動、海上演習、演習総括の3段階に分けて実施された。(文:翟崑・北京大学国際関係学部教授。人民日報海外版掲載)
中国ASEAN「海上合同演習2018」は元々2015年に中国が中国ASEAN国防相非公式会議で提案したもので、3年を経てついに実行された。
演習の準備に長い時間がかかった理由は戦略、戦術、技術の3点に求められる。戦略レベルでは、演習はASEANが長年中米両国間で維持してきたバランス戦略を打ち破り、東南アジア地域の安全保障に不安定性と不確定性をもたらす恐れがあった。戦術レベルでは、ASEAN内の利害関係者が演習推進の可否を南中国海での中国との駆引きのカードにしかねないことが、演習の実行プロセスを遅らせた。技術レベルでは、合同演習が提案に終わり、実行では推進力に欠くことのないよう、双方の相互信頼の増進を待つ必要があった。
南中国海問題が沈静化するに伴い、中国とASEAN諸国との間の軍事的相互信頼が増進し、次第に溝が埋まってきた。その一方で米国は「インド太平洋戦略」を強力に推し進め、米印日豪の「四国同盟」が形成されつつある。これは中国封じ込めの勢いを形成しただけでなく、地域の安全保障におけるASEANの役割も相対的に引き下げた。こうした中、中国とASEAN諸国は共通利益が増え、演習実施の契機が次第に熟した。
注目に値するのは、今回の演習の決定と実行が、ちょうど中国とASEANが戦略的パートナーシップを構築してから15周年にあたり、「南中国海における行動規範(COC)」が具体的進展を得た時期にもあたり、勢いに乗じたものだと言えることだ。この成果自体が歴史的、ブレークスルー的なものであり、中国ASEAN関係が新たな歴史的段階に入る見込みがあることを示している。今回の行動は積極的なメッセージを発し、中国ASEAN間の政治的相互信頼が強化され、安全保障上の共通認識が増強され、ルール共同制定の見込みがあることを示した。
第1に、政治的相互信頼の強化。演習は中国とASEAN諸国との政治的相互信頼が強化されたことを示した。この変化は喜ばしいものであり、引き続き強化し、深めるべきだ。第2に、安全保障上の共通認識の強化。「近隣国と親しくし、近隣国をパートナーとする」。中国とASEANを互いを脅かす敵ではなく、地域の安全を共に築くパートナーであると見て初めて、この地域の国々は本当に安全を得ることができる。今回の演習は中国とASEAN諸国が安全保障意識を共に形成するうえで、一定の推進作用を果した。第3に、ルール共同制定の見込み。中国はASEANと初めて戦略的パートナーシップを構築した国であり、中国ASEAN双方は「黄金の10年」を踏まえた「ダイヤモンドの10年」を期待している。したがって演習の実施及び今後の制度化、常態化は中国ASEAN関係の安定性をさらに強める。
今後中国とASEAN諸国が防衛・安全保障分野で協力の空間を拡大し、可能性を増やすには、2つの面から着手できる。第1に、相互信頼を増強し、共通認識を形成する。中国とASEANは地域の共通の安全保障という考えを構築し、中国とASEANが南中国海問題を共同で解決するという政治的共通認識を形成する。第2に、規範をすり合せ、制度を共同で構築する。中国とASEAN諸国間の演習モデルを引き続き発展させ、完全なものにし、これを徐々に常態化、規範化、制度化、多様化することができる。各国の共同構築を通じて、日増しに強大化する中国の海軍力を、この地域の国々が共に恩恵を受け、享受する公共財にする。対話によって疑念を解消し、相互交流によって信頼を増進する。交流と協力の中で地域の国々の連動的発展と互恵・ウィンウィンを実現する。(編集NA)
「人民網日本語版」2018年10月29日
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