「電子書籍」と聞いて耳慣れないという読者はいないはずだ。紙に印刷されているような見た目と、実際の書籍とほぼ同じくらいの大きさで、ページをめくる時に軽く画面に触れる以外は、読書するときの感覚が限りなく書籍に近づけてある。しかし、スマホなどのモバイル端末が発達していくにつれて、読書習慣にも変化が生じ、かつては「おしゃれ」と言われていた「電子書籍」は見る影もなくなりつつある。中国新聞網が伝えた。
電子書籍とは本を読むための専用端末で、「電子書籍リーダー」の略。一般的に、電子書籍は紙の書籍を読むのと似た感覚を味わうことができる上、大容量、持ち運びに便利というメリットがある。
普段からよく読書するという、ある民間企業に勤めている90後の黄小菲さんは、「このタイプの電子書籍は流行がすでに過ぎてしまったイメージ。一番最初に流行したのは『漢王電子書籍』だった。学生にとって、1台数百元(1元は約17.1円)もする電子書籍は高く感じられた」とし、「ここ数年はスマホで読書する人が自分の周りでも増えており、電子書籍を利用する読者は減ってしまったようだ」との考えを述べた。
たしかに、地下鉄やバスの中では、うつむいてスマホを見る人たちの姿をほぼ毎日目にすることができる。2017年4月、中国新聞出版研究院が北京で最新の国民読書調査データを発表し、デジタルメディアの急速な発展による影響を示している。2016年、中国の成人のデジタル読書スタイル(オンライン上での読書、スマホを使った読書、電子書籍を使った読書、タブレット端末を使った読書など)の利用率は68.2%に達し、8年連続で増加した。各種デジタル読書ツールの中で、インターネットを使った読書の利用率は4.0ポイント、スマホを使った読書の利用率は6.1ポイント上昇した。それに対して、電子書籍を使った読書の利用率は1.0ポイント、タブレット端末を使った読書の利用率は0.7ポイント低下した。このデータをみても、電子書籍の発展状況はあまり楽観視できるものではないことが分かる。
あるデジタル出版業界の関係者は、「現時点では、モバイルネットの発展の影響を受け、スマホを使った読書の利用率の上昇スピードは電子書籍の利用率よりも早いことは明らかだ」との見方を示し、「デジタル読書の利用率を総合的に見ると、電子書籍の利用率の低下は当然といえるが、電子書籍の売り上げが伸び悩み、人気が低下していると結論づけることはできない。実際には、より良い読書に対するニーズがあるので、多くの読者が電子書籍の利用者もしくは隠れた利用者となっている」とした。
前出の黄さんは読者の立場からすると、電子書籍の発展の余地はまだ大きく、その良さはスマホなどのモバイル端末とは比べ物にならない点もあるとし、「実は就職して数年してから電子書籍を購入した。スマホは確かに便利だが、目のダメージが大きく、長時間読書しているとかなり疲れてしまう。また、微信(Wechat)のメッセージや電話などで読書を邪魔されることもある。電子書籍にはそのような問題はなく、読書により集中することができる」と語った。
モバイル電子書籍大手の「掌閲科技」の電子書籍事業部の王剛総経理は、「最近の電子書籍は多くのアプリの機能を参考にしており、利便性が高まってきている。また、新しい書籍のデジタル版化の速度もとても速くなっている。この業界をよく知る立場からいうと、機能やコンテンツ、価格など、その種類は異なるものの、電子書籍を使った読書のニーズは非常に多い。そのため、企業は読者のニーズに基づいて異なる種類の製品を開発し、ターゲットを絞って製品を販売する必要があり、電子書籍は依然として発展の余地があるといえる」と指摘した。(編集YK)
「人民網日本語版」2017年11月10日
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