中国人の友人からしばしば、「2020年に東京五輪が開幕する。今のうちに東京で不動産投資したらどうだろう?」という質問を受けることがある。
この質問に答える前に、筆者の日本人の友人である田村さんの話をしよう。(文:陳言。瞭望東方周刊掲載)
筆者が東京を訪れる際は、毎回田村さんと会うようにしている。唯一不便なところは、田村さんの住まいが遠く、東京の中心部に来るのに片道2時間ほどかかる点だ。私たちは会うと必ず酒を飲み交わすのだが、ちょっとでも遅い時間になると田村さんは終電を逃し、家に帰れなくなってしまう恐れがあるため、毎回心行くまで語らうこともできない。
最近何度か東京を訪れた際、田村さんを誘ったところ、意外にもとすぐに駆けつけてくれた。白いひげをたくわえた田村さんは、「都内の物件を1軒購入した」と私に話してくれた。私は、「田村さんはどうやってそんな大金を急に稼げたのか?東京中心部の物件をそんなに簡単に購入できるものなのだろうか?」と心の中で疑問に思っていた。
田村さんに詳しく聞いてみると、その物件は田村さんの友だちからプレゼントされたものであることが分かった。
彼が田村さんに物件をプレゼントした理由は気前が良すぎるというわけではなく、東京の多くの地域がすでに「スポンジ化」してきているからだ。マンションに全く住人がいないという状況も当たり前になってきており、不動産管理会社は常に安定した管理費を回収できず、多くのマンションの電気回線、水道管、ガス管は長年修理されず、エレベーターも正常に動かず、借り手がどんどん減っている。たとえ貸し出したとしても、家賃収入はそれほどの額ではなく、時には毎月の管理費や毎年の不動産税を差し引くと赤字になってしまうこともあるという。
そのため、多くの人が、管理費や不動産税などの費用を払ってもいいという友達にこのような物件を無料で譲渡し、自分の負担を減らしている。田村さんがプレゼントされたのも、このような少し「厄介」な「スポンジ物件」だ。
中国では「海綿都市」という言葉はいい意味で使われており、雨が降った後にその水を即座に排水し、雨水として利用する環境に優しい都市のことを指している。しかし、日本では、「スポンジ化」は空き家がどんどん増えていく現象を意味している。
1950-60年代、東京都は地方からの就職者やホワイトカラーのために安価な賃貸物件を建設し、多くの人々が当時抱えていた住宅問題を解決させたが、現在ではそのような物件の多くが「スポンジ物件」と化している。住人の多くが80-90代の高齢者で、住人は減ってきており、設備も古くなってきている。そのような物件はまるで、食器洗いに何度も使用されて、色がくすみ、形は崩れ、至るところ穴だらけになったスポンジのような見た目そっくりだ。
日本の国土交通省が公式に発表した統計データによると、2013年、日本の空き家数は820万戸で、2017年、その数字は1000万戸以上にまで達している。また、16年後の2033年には、日本の空き家数は2150万戸に達し、総住宅数の3割を占めるようになると予想されている。
不動産バブルが深刻な中国の都市にとって、このような日本の現状は良い警告となるだろう。
筆者は田村さんに、「2020年の東京五輪開催に伴って、新しいインフラ設備が建設され、世界各地から大勢の人がオリンピック観戦のために東京を訪れる。東京の不動産市場が上昇する余地はあるはずですよね?」と聞いてみた。
すると、田村さんは首を横に振り、この話題をあまり語りたくないというような表情で、「『スポンジ化』を止められたとしたらそれだけで十分だ」と話した。(編集YK)
「人民網日本語版」2017年9月25日
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