ECの猛攻 伝統的な百貨店が「試着室」に
上海市北西の郊外に位置する嘉定区で、このほど意外な出来事が起きた。嘉定区の2012年のB2C売上高が、上海市の消費財EC取引額の3分の1を占めたのだ。その増加率と規模は、伝統的な「十里洋場」(上海の旧租界地の賑わい)を上回った。一方で、上海市の百貨店業界の売上高が、マイナス成長となった。新華社が伝えた。
両者を比較すると、面白いことが分かる。ECの台頭は都市が持つビジネス構造を静かに変化させている。ECから「退位」を迫られた伝統的な百貨店は、「試着室」に成り下がってしまうのだろうか。
◆ネット通販、ビジネス構造を変化
上海市嘉定区は近年、EC産業に力を注いでおり、京東商城、新蛋網、凡客誠品などの中国EC大手を誘致している。嘉定区のEC企業は2012年、取引額が前年比53%増の356億4000万元(約5346億円)に達した。
嘉定区の馬春雷区長は、「インターネットには地域差が存在せず、郊外のビジネス発展にかつてないチャンスをもたらしている。ECの重要な支柱は、スマート化された物流・保管システムである。上海のような国際的な大都市では、市街地に多くの土地が残されていないが、郊外はこれにより幅広い発展空間を手にしている」と指摘した。
ECは現在、中国の伝統的なビジネス構造を変化させている。淘宝網と天猫(Tmall)は2012年11月11日の販促活動により、1日のみで191億元(約2865億円)の売上を達成した。浙江省義烏市はそもそも、青岩劉村という無名の村であったが、現在は淘宝網の各地の2000店以上の店主が集まっており、「中国淘宝第一村」と称されている。
中国商務部(商務省)電子商務情報化司の聶林海副司長はこのほど上海で、「2012年の中国オンライン小売取引額は1兆元を超えた。中国は2013年に米国を抜き、世界最大のオンライン小売市場になる」と発表した。