お代は客次第 福州市のレストランで新しい試み
メニューも、サービス料も、レジもない……福建省福州市に、そんな変わったバイキングレストランが存在する。ここでは、客は全く自分の意志だけで支払額を決定できる。一円も払わなくても構わないのだ。新華網が伝えた。
デザイナー出身のレストランオーナーである劉鴻飛さんは、レストラン開業のコンセプトは海外での経験から思いついたと話す。外国では、人々は浮浪者に心のこもった食事を差し出したり、一杯余分にコーヒーを買ってただで道行く人に差し出したりすることが時々ある。ここから彼は「差し出すことは喜び」という悟りを得た。そして彼はあるアイディアを思いついた。中国で営利を目的としない、より多くの人に相互の信頼や差し出すこと、自覚を広げるためだけのためにレストランを創業しようと思ったのだ。
「ここでは金銭は最も大切なものではありません。私たちは自らの行動で、正しい価値観をみんなに広げていきたい。信頼のメカニズムを構築してお客様が自覚的に支払う意識を培いたいのです」と劉さんは言う。
コック長の彭勇さんはこのレストランの3人の株主のうちの1人だ。彼は取材に答えて、「以前自分でレストランを経営していたが、客が支払いの時に繰り返しレシートを確認しているのを見て気分が良くなかった。それで、劉さんが店をやりたいという計画を聞いて、すぐに株主になると決めた、そして報酬に拘りなくここでボランティアをし始めたんだ」と話す。
彭勇さんによると、レストランは1人あたりの価格を決めず、店員は自ら支払うことだけを客に告げる。支払うかどうか、いくら支払うかは客が自分で決める。食事以外にレストランの果物やジュースも自由に飲食できるという。
客として来店していた林珍珠さんは、このレストランで食事をするたびにオーナーの「大きな愛」が伝わってくる。ここでは満腹になれるだけなく、心も満たされると話す。「客はいくら払っても自由です。このモデルはとても目新しいので、福州だけでなくどこにも類似の店はないと思います」。
リピート客から人気を得ている以外に、更に多くの人が初めてこんな無料で飲み食いできるレストランがあると耳にして半信半疑で名前につられて試しに来るのだという。
もちろん支払わない客も一部いる。劉さんによると、払えない生活が大変な人々にはできる限り助けてあげたいので、支払わない客も同じように歓迎している。これが影響して、はじめは食い逃げしていた一部の客も、後には主体的に店で働かせてほしいと言ってきたという。
来客はどんどん増えるが、彭勇さんは記者にレストランの収支を計算してくれた。現在、店の1カ月の賃料に水道、電気などの経費を足すと6、7万元の支払いになり、1日当たり2000元前後の収入が必要となる。この支払いは全て3人の株主が一緒に負担している。それでも、彭勇さんは自分の痛みさえも楽しみだと感じるという。
「私たちは損しているけれど、あんなに多くの人々から支持されているのを見ると、社会にもっと貢献できるのではと思います。自分の価値を見つられて私たちは嬉しいです」と彭勇さんは話す。
劉鴻飛さんは一つの願いを話してくれた。「店を訪れる客一人一人が信頼の輪に入り、差し出す喜びを知ってほしい。この店がどれくらい保つかはわからないが、全力で維持していこうと思っています。1日も続けられなくなったら、そのバトンを他の人に引き継ぎたい」。(編集EW)
「人民網日本語版」2013年10月10日