ポピュリズムとは、一般大衆の利益や権利、願望を代弁して、大衆の支持のもとに既存のエリートである体制側や知識人などとあらゆる手段を講じて対決しようとする政治思想のことで、日本では「大衆主義」とも呼ばれる。ロシアでは19世紀、ポピュリストはナロードニキと呼ばれ、農奴が賃金奴隷として売られ、地主が資産家に代わったに過ぎないとして、ナロードニキ運動を展開。「ヴ・ナロード」（人民の中へ）というスローガンをかかげて農村に入り、皇帝を小作農によって倒す企てを立てた。ナロードニキは政治闘争の必要性を否定し、皇帝が神懸ったものではなく殺害できる存在であることを小作農に示すために、テロリズムの実施を拡大させた。このような思想の拡大と実践はロシアの革命に有害無益だった。その後、ナロードニキは革命家ウラジーミル・レーニンを代表とするマルクス主義者と闘争を繰り広げ、思想理論の点で完全に粉砕されてしまった。中国紙「中国青年報」が報じた。
ポピュリズムは「人民優先」を唱道するため、民主主義と似通った性質を持ち、ポピュリストは民主の唱道者、推進者であるという誤解を生む。しかし、ポピュリズムは「人民」の利益を守る点で極端に走り、その実践の結果は人民の根本的な利益を損なっている。革命時代、ポピュリストは「革命者」として出現し、一般人民に全く必要のない犠牲を払わせただけでなく、革命運動を誤った方向へと導いた。一方、平和を求める時代に入ると、ポピュリズムは往往にして政府に対抗するよう民衆を唆す理論上のツールとなる。
中国は現在、現代化と民族復興という偉大な目標を実現するための重要な時期に位置し、社会全体が前代未聞の激しい変化、転換を経験しており、社会の複雑化は世界でも類を見ない。それに加え、モラルに欠け、能力に乏しい官僚がおり、民衆の権益が損なわれるというケースが発生している。このような状況はポピュリズムの繁栄に社会的基礎を与えてしまうことになる。そのため、さまざまな理由を唱えたり、実際に民衆の利益を守るため、さらに個人の名声や利益のために、民意の代弁者気取りで、民衆を政府に対抗するよう扇動し、極端な手段を用いて、社会の安定や経済の発展に水をさそうとする人も出現する。しかし、「経済発展」や「社会の安定」は、一般民衆の利益の根本であるはずだ。発展がなければ、庶民は最も基本的な暮らしさえ送ることができず、教養や精神生活などもってのほか。政治的権利や人の尊厳があったとしても、非常に限られたものになってしまう。発展のためには、安定した社会・政治環境が欠かせない。当然、安定とは現実社会の民生に損失を与える行為や格差などを見て見ぬふりをするという意味ではない。これらは、社会発展のために必ず解決しなければならない問題だ。ただ、解决の手段は「すべてを打ち崩す」ではなく、法治の軌道上で、秩序だって行うべきものだ。
中国のポピュリズムの発展は現在、民族主義との組み合わせという兆しを見せている。最近、日本の野田政権が「釣魚島（日本名・尖閣諸島）」を「国有化」したことが中国国内で反感を買い、暴動へとつながった。これが一種の「兆し」だ。「愛国心」という名の下に、ポピュリズムを唱道し、暴力に訴え、日系企業などを破壊しただけでなく、日本製の製品を使用している中国人にさえ危害を加えた。さらに、その機会に乗じて、破壊・略奪をはたらき、罪のない人を傷つけた。このような事態に、良識ある中国人も心を痛めた。一部の中国人にとって、モラルの向上が必須条件となっている。一方、ポピュリズムの影響も軽く見ることはできない。このような状況下で、米国際政治学者・ジョセフ・ナイが「ポピュリズムの色彩を帯びた民族主義」と指摘するように、実際にはポピュリズムは民族主義という名目で出現する。
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