日本に溶け込めない「華流」の理想 (2)
■盲目的な「グローバル化」はできない
「レッドクリフ」主題歌を歌ったAlanはチベット族の女性歌手で、中国名は阿蘭・達瓦卓瑪。彼女のレコーディングには多くの著名日本人スタッフが結集した。しかし来日4年でAlanのリリースしたシングル15曲の販売は13万枚強にとどまった。成功をつかめなかった彼女は日本市場を最終的にあきらめ、中国での再出発を選んだ。
不成功の主観的原因は往々にして多岐にわたる。もっとも一点、筆者が非常に重要だと感じるのは、流行ポップス界から海外進出を果たした初のチベット族女性歌手として、Alanの売り出し方は過度に「グローバル化」を追求し、本人が生まれつき持つ長所や個性が失われたことだ。どれだけ歌唱力があろうと、スタッフの実力が高かろうと、この根本的な欠陥は補いようがない。いわゆる「グローバル化」は彼女の日本でのキャリアに影響したばかりか、国内ファンの彼女に対するイメージにも負の影響を与えた。「Alan」は中国人にとって実に馴染みにくい芸名だった。
国際市場で大成功を収めた中国映画といえば、2002年のあの「HERO」をとりあげずにはいられない。10年以上経過した現在でも、「中国的要素」のグローバルな広がりにおいて、「HERO」は模範例だったといえる。
「HERO」では「古琴を弾き、中国将棋で勝負し、書をたしなみ、絵画を味わう」など、中国的文化要素が数々のシーンにいきいきと織り込まれていた。ストーリー自体には踏み込んでいないが、ムードを醸し出す絶好のアイデアだった。古琴と雨音が交錯する中、李連傑(ジェット・リー)と甄子丹(ドニー・イェン)が現場で魅せた対決の名シーンは、無数のファンの心中深くに今も刻まれているはずだ。
当時最先端の音響効果を取り入れ、映画館の完全に閉じられた別世界の空間で、すべてがめくるめく美しさに変貌した。その背後にあった「天下統一こそ平和」という価値観が真理かあるいはでたらめか、考えた人は何人いただろうか。とにかく、中国的要素は映画そのものに関わり、国内外ファンに欣然と受け入れられた。
高度にプロフェッショナル化したチームワークこそ、もっとも民族的特色ある文化作品を誕生させることができる。これこそグローバル化した現代の文化産業ビジネスモデルのしかるべきベクトル、筆者はそう考えている。(編集HT)
「人民網日本語版」2013年7月9日