「見立て」で見つける「小さな幸せ」 田中達也氏
北京市前門にあるMUJI HOTEL 北京で9月1日から、日本のミニチュア写真家で、見立て作家の田中達也氏による「small MUJI展-日用品の楽しみ方-in 北京」がスタートした。開幕初日となった1日には田中氏自身が会場でメディアや関係者に向けて、「見立て」や今回の展示作品について紹介を行った。人民網が伝えた。
会場で展示作品の紹介を行う田中達也氏(写真奥左手、写真提供・MUJI HOTEL 北京)。
田中氏の作品の特徴はなんと言っても「見立て」。日用品や食品など身近なものを別のモノに見立て、ミニチュア人形と組み合わせて独自の世界観を作り出している。そして作品と同じくらいユニークなのが、ダジャレが効いたタイトル。「形の見立てと、言葉の見立てという2つの見立てを楽しんでもらえれば」と田中氏。
「電卓を田んぼに見立て、デジタルのモノを自然のモノに見立てるというギャップのある見立てが面白い」と田中氏。また「実際の田植えも天候や水を引き入れるタイミングなどを計算しているので、それを計算機で表現する面白さ、さらに電卓のソーラー電池で稲が育つという想像を膨らませてもらってもいい」としている。作品タイトルは「田卓(でんたく)」。(写真提供・MUJI HOTEL 北京)。
田中氏が使う「見立て」とは芸術における比喩表現であり、人に服を選んであげる場合や、医者が診断する場合も「見立て」という言葉を使い、日本人にはなじみの深い言葉だ。月見そばの「月」は卵を月に見立てており、枯山水は水を一切使わずに、石や砂、草木を山や海などの雄大な自然風景に見立てている。そして田中氏はこの見立てを「工夫する力」とも考えている。
展示作品「想像の長城」の紹介を行う田中達也氏(撮影・玄番登史江)。
また今回の展示のもう一つの特徴は、展示作品は全てMUJIの商品を使用して作られている点だ。そのメインを飾るのは、田中氏にとってこれまでで最大級のサイズになったという作品「想像の長城」。展示場所となったフロント前の長いテーブルから、中国の長いもの=万里の長城というイメージで長城を作ることを決めたという。そして実際に万里の長城に足を運び、下見した中で目にした風景が、そこかしこに盛り込まれている。長城で意外にも多く見かけたという猫の他、長城の周りに広がっていたという田んぼは様々な商品を使って表現されている。そしてスリッパの洞窟ではなぜか熊と人が決闘しているシーンも!
展示作品「想像の長城」で繰り広げられている熊と人の決闘シーン(撮影・玄番登史江)。
作品のスタート地点となる長城の左端は、リングノートなどの商品を使ってはいるものの、視覚的に長城だということが分かるような長城らしさを意識した作りになっているが、右に進んで行くほど、商品のバリエーションが増え、見立てが複雑になっている。ただ、最初に「これは万里の長城だ」と頭にインプットされているので、商品だけでも万里の長城に見立てていることが分かるように工夫されている。またパートによって、文房具、キッチン用品、化粧品などのジャンルごとにまとめられている。そして長城を覆う山肌は全て衣料品。これも緑に覆われた山肌なのだという「見立て」に変換する助けとして、ところどころにミニチュアの木が配されている。このように大きな作品ではあるが、その「見立て」を分かりやすくするために、細々とした配慮がなされている。
長城の両側も敢えて途中でぶつ切りになっているような作りになっており、そうすることでまだまだ外側に続いていくのだと想像できるようにしているのだという。そしてタイトルの「想像の長城」は、「まるで長城の長さのように、見立ての想像ももっと長く続いていくといいなという思いを込めてこのタイトルにした」としている。
作品「想像の長城」の左端に書かれた田中達也氏のサインと田中氏自身のミニチュア人形(写真提供・MUJI HOTEL 北京)。
そんな「想像の長城」の左端には、田中氏のサインと3Dプリンターで作成した田中氏自身のミニチュア人形が置かれている。これ以外にも、この展示会の作品の中には、もう1ヶ所だけ田中氏自身のミニチュア人形が隠されているという。そんな遊び心に満ちた展示を見ながら、「見立て」の楽しみを満喫してはいかがだろうか?「small MUJI展-日用品の楽しみ方-in 北京」は11月1日まで開催予定(文・玄番登史江)。
「人民網日本語版」2024年9月4日
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