中国人科学者がホッキョクグマの体毛のような保温素材を開発
浙江大学のチームはホッキョクグマの体毛の構造を模倣し、エアロゲルを密封した超保温人工繊維を作り出した。この素材は保温性に優れ、軽くて薄く、丈夫という特長を備えている。この成果に関する論文は22日、国際的な学術誌「サイエンス」に掲載された。新華社が伝えた。
この成果は浙江大学化学工学・生物工学学院の柏浩教授と、高分子科学・工学学部の高微微准教授のチームによるものだ。
柏教授によると、ホッキョクグマは保温性が非常に高い体毛のおかげで、氷点下40度の環境に適応できる能力を備えている。彼らはホッキョクグマの毛が中空構造で、内部に「静止中」の空気を大量に含んでおり、毛の1本1本すべてに1層の殻があることを発見した。電子顕微鏡で見ると、この殻の厚さはおよそ20ミクロンで、毛の直径の4分の1弱を占めている。
光学顕微鏡で見たホッキョクグマの毛(写真提供・浙江大学)。
この発見にインスピレーションを得て、研究チームは約6年の歳月をかけて、新しいタイプの「核―殻」構造繊維を作りあげた。繊維の中心は高分子エアロゲルで、その内部には直径10-30ミクロンの細長い小さな穴が分布している。小さな穴は同じ方向に並んでおり、それはまるで空気を保管する「倉庫」のような働きをする。繊維の表面にはTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)の外殻が1層あり、内部のエアロゲルを覆っている。
柏教授は、「『核』は非常に高い保温性を実現する。繊維内部の小さな穴の方向とサイズを調整することで、赤外線放射を封じ込め、熱の流失を防止することができる。『殻』は強靭性と頑丈さを実現し、繊維に優れた力学的サポートを提供し、摩擦や引張り、水洗いに耐えることができる」としている。
研究者は氷点下20度に設定された冷凍庫の中で初期温度を同じにしたダウンジャケット、ウールセーター、メリヤスシャツ、そして「ホッキョクグマセーター」を着用し、その保温効果を検証した。これにより、衣料品の表面温度の上昇が少ないほど、人の熱量の流失が少なく、その保温性が高いことがわかる。
氷点下20度に設定された冷凍庫の中で研究者が4種類の衣料品を着用し、その表面温度を調べた結果。左から順に「ホッキョクグマセーター」、ダウンジャケット、ウールセーター、メリヤスシャツ(写真提供・浙江大学)。
研究者によると、実験開始から数分後にはメリヤスシャツの表面温度が10.8度に、ダウンジャケットは3.8度まで上がった。それに対し、厚さがウールセーター程度で、ダウンジャケットのわずか3分の1から5分の1ほどしかない「ホッキョクグマセーター」は、表面温度が3.5度しか上がらなかった。
柏教授は、「ホッキョクグマの毛から、大自然が『核』と『殻』に各自の役割を果たさせていることがわかった。生体工学の本質は問題解決法を大自然から学ぶことだ。大自然の秘密を明らかにし、新たな知識を発見することで、人々の生活を改善する新材料を作りだす。これは生物工学の使命であり、チームが長年にわたり、取り組み続けてきたことだ」としている。(編集YF)
「人民網日本語版」2023年12月25日
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