微信(WeChat)は4月29日、微信の公式アカウントプラットフォームのユーザー投稿に、IPアドレスに基づいてユーザーの所在地が表示されるようになったことを発表した。ユーザーが表示をオンにしたりオフにしたりすることはできない。28日には、微博(ウェイボー)でも、コメント投稿時やアカウントページに、IPアドレスに基づいてユーザーの所在地が表示されるようになった。中国国内アカウントは省(自治区、直轄市)、海外アカウントは国(地域)が表示される。4月中旬には、ニュースアプリ「今日頭条」やショート動画共有アプリ「抖音(TikTok)」、Q&Aサイト「知乎」、SNS「小紅書」などでも、同様の機能が導入された。工人日報が報じた。
各オンラインプラットフォームの説明をまとめると、ユーザー所在地表示機能が追加されたのは、話題となっている問題や事件などの当事者であると偽ることや悪意あるデマ、サイバー暴力、アクセスを増やすための不正といった悪質な行為を減らし、ネット上の秩序を守り、ユーザーのリアルタイムで正しく、有効な情報を得る権利を守るための措置だ。
インターネットが誕生すると、時間の制約を受けず、自由な空間で、容量が無限であるといった特徴があるため、情報取得や人と人の交流のスタイルは次第に変化するようになった。ただ、利便性が増すと同時に、ネット上は、バーチャルな空間で、匿名での情報発信が可能であるため、それが悪用されるケースも増えている。でたらめのデマを作り上げる人もいれば、キーボードを武器にして特定の個人を誹謗、中傷したりする人もいる。また、注目を集める事件などが起きた時に、「現場にいる」ふりをして、適当な画像を見繕ったり、編集し、つなぎ合わせた動画を作ったりして、アクセス数を増やそうとする人もいる。
サイバースペースが混乱し無秩序な状態であれば、たくさんの悪影響が生まれてしまう。例えば、情報が錯綜していると、人々は何が真実であるか分からず、虚偽の情報により、価値観を捻じ曲げられたり、悪感情が沸き上がるようあおられたりすることは避けられない。また、近年は、サイバー暴力や悪意あるデマも常に問題となっており、被害者に精神的苦痛を与えたり、最悪の場合、人の命が犠牲になったりするケースさえ生じている。
2020年初め、微信のある公式アカウントが、湖北省武漢市の華南海鮮市場の新型コロナウイルス感染症に関する文章を複数投稿し、多くのネットユーザーが転送したものの、後になってそれらの記事は、アクセス数を増やして広告収入を得るために捏造されたことが明らかになったことは、まだ多くの人の記憶に残っている。その容疑者は逮捕された時、江蘇省無錫市におり、武漢市に行ったことは一度もなかった。当時、IPアドレスに基づいて投稿者の所在地が表示されていれば、関連の文章が注目を集めることはなかったかもしれない。
今回、多くのオンラインプラットフォームがユーザーの所在地を表示する機能を次々と導入していることで、その所在地と、普段投稿しているとしている地域が一致せず、噓がばれてしまったブロガーも一部いることは注目に値する。例えば、「北京のご当地グルメを紹介」としているブロガーは広東省や湖南省におり、「欧州から情報をお届け」としているあるブロガーは実際には中国国内にいることが明らかになっている。それに対して、「一部のプラットフォームのコンテンツは、契約している運営会社が代理で投稿している」と説明するブロガーもいる。
ただ、客観的に見ると、ユーザーの所在地を表示するというのは、オンライン上の環境を守る活動の一環であるものの、ネット上の全ての違法行為をなくすことはできず、使い方を間違えると、逆効果になってしまう可能性さえある。例えば、「所在地が表示されると、地域に対する偏見を生むのではないか」や「仮想IPアドレスを使った違法行為を助長してしまうのでは」と懸念するネットユーザーもいる。これら問題は、オンラインプラットフォームが今後のアップデートを通して、関連の機能を最適化して解決していくしかない。ユーザーの所在地表示がどれほど功を奏すかは、今後の成り行きを見守るしかない。
健全で、秩序正しく、安心なサイバースペースを作り上げるためには、司法と行政当局、インターネット関連企業が共に努力する必要があるだけでなく、全てのネットユーザーがモラルを向上させ、自分の行動を制御できるよう努力する必要もある。公明正大なユーザーが増えるほど、インターネット上の雰囲気も健全で秩序正しくなり、悪意ある人が悪用する隙も小さくなるだろう。(編集KN)
「人民網日本語版」2022年5月6日