「彼氏がほしいと口では言っているものの、できそうになると、不安な気持ちになる」と話すのは、甘粛省蘭州市に住む90後(1990年生まれ)の女性・祁文さんだ。中国青年報が報じた。
恋愛となると、多くの若者が祁さんと同じように、口では「恋人がほしい」と言っていても、誰かから紹介してもらえるとなると、きっぱりと断っている。若者に話を聞くと、「恋人や結婚相手がなかなか見つからない」という声は多いものの、コンパを企画してみると、真剣に交際相手を探している人は実際少なかったりする。こうした人々をネットでは、「口だけタイプの恋愛」という言葉で表現し、「恋人がほしいと言っているのに、全く積極的に行動しない人」と定義づけている。
自分には実力がないと感じ、理想にしているような仲の良い関係を現実の世界で実際に築くことができなかったり、付き合い始めてから、互いに相手の本当の姿を知ってがっかりしたりすることを恐れて、ずっとうやむやにしてみたり、すぐに逃げたりすることを選ぶという人も多い。
蘭州初の「出会い系コンビニ」を経営する李静雅さんは、こうした若者たちの「キューピッド役」を担っていく過程で、「口だけタイプの恋愛」というケースを目にしたことがあると言い、「一番印象深かったのは、イベントに参加しに来たのに、ゲームの時間になると、参加を拒否した女性。打ち解けるために、落としたら負けというルールで、みんなが手をつないだ状態で風船バレーをするというゲームだったが、その女性は、『自分は医者で、さっき手術が終わったばかりで、手が汚いから』という理由で、みんなからの誘いを断り、イベントの途中で帰ってしまった」と話す。
では、「恋人がほしい」というのを「口先」だけに留めてしまう人が多いのはなぜなのだろうか?コンパを企画したり、参加したりしたことが何度もあるという俱娜さんは、「今の若者は理想化された恋愛に憧れるようになっていることと関係がある。ネットならではの恋愛ドラマや感情に訴えるようなショート動画の影響で、若者はいわゆる『癒される恋愛』の影響を受けており、現実に恋愛し始めると、自然と理想化された恋愛と比較し、その大きな差を感じる」と分析する。
心理カウンセラーの真学さんは、「好きになっても、責任は負いたくない」というジレンマだと指摘する。いわゆる「責任」とは、真剣に恋愛をするという決定や恋愛関係を続けるために努力を払うことなどを約束することだ。それは、「親密」、「激情」、「約束」からなる恋愛の重要な一部分で、恋愛の基本的な属性でもある。しかし、今の多くの若者は、もっと価値のあるものを追求する妨げとなると感じて、約束することを恐れているのだという。
真学さんは、「本質的には、そのような若者は自己の安定したアイデンティティが発達していないと言える。つまり、自分のニーズや感情、能力、目標、価値観といった特質を、一つの人格枠にまとめることができていないということ。アイデンティティが発達していなければ、他の人と親密な関係になることのリスクを負う勇気が出ない。誰かと恋愛関係になると、自分のアイデンティティと相手のアイデンティティが融合して一体となる。そうなると、自分を犠牲にしたり、損失を受け入れたりしなければならない。その過程を超えると、恋愛を続けることができ、孤独に別れを告げることができる」と説明する。
市場経済の影響で、「利己主義」が恋愛関係の理性化に拍車をかけている。若者は、メリットとデメリット、損得を考えすぎ、真剣に恋愛にのめりこむのをためらうようになっている。その他、日々の暮らしのストレス増大や、行動範囲とその動きの拡大、労働環境の不安定さの高まりなども、時間もパワーもたくさん必要となる恋愛に若者が及び腰になる理由となっている。
真学さんは、「今の青年は恋愛を必要としていないのではなく、18-30歳という年齢において、温もりか、それとも孤独かという葛藤に悩まされている段階。そのため、恋人がほしいという独身の若者は、自分の趣味などに合わせてコンパやイベントに参加し、多彩な交流を通じて、恋愛のために犠牲を払い、約束することも、価値のあることだと少しずつ実感していけばよい」との見方を示す。
交友範囲を広げ、他の人を受け入れることを学ぶことは、「口だけタイプの恋愛」に別れを告げる最も良い方法だ。真学さんは、「若者は、恋愛の当事者になってみるといい。傍観者のままでは、理性的であり続け、傷つくこともないものの、愛の素晴らしさ、癒しを感じることも永遠にできない。勇気を出して、手を携えて、肩を並べ、2人の新生活のクリエイターになってみるといい」とアドバイスする。(編集KN)
「人民網日本語版」2021年12月28日