広く注目を集めていた中国経済の半期報告がこのほど発表された。上半期の国内総生産(GDP)は比較可能な価格で計算すると前年同期比12.7%増、2年間の平均増加率5.3%増の53兆2167億元(1元は約16.9円)に上り、主要マクロ指標は合理的な範囲に収まった。
この半期報告から伝わってくるのはどんなシグナルだろうか。中国経済は下半期にどうなるだろうか。
中国経済の回復ペースが鈍化?
上半期GDPの増加幅を四半期ごとに見ると、第1四半期(1-3月)は前年同期比18.3%増、第2四半期は同7.9%増となっており、第2四半期の増加幅は第1四半期を大幅に下回った。しかし昨年の数字を加えた2年間の平均増加率を見ると、第1四半期は5%増、第2四半期は5.5%増だった。中国経済の回復ペースは鈍化したのだろうか。
マクロ経済学者で中国人民大学副学長の劉元春氏は、「まず、前年同期のパラメータが昨年の基数の影響を受けた。昨年第1四半期のGDPはマイナス6.8%で、第4四半期(10-12月)はプラス6%に達し、第1四半期が低く第2四半期が高い『前低後高』になった。この基数の影響を受けた結果、今年は第1四半期が高く第2四半期が低い『前高後低』という状況となった。しかし、これは中国経済の回復ペースが鈍化したというわけではない。考えなければならないのは、昨年第1四半期と第2四半期(4-6月)の数字が低く、特に第1四半期が低かったため、前年同期比増加率で見ると大幅な回復という形になるいう点だ。このような前年同期比増加率パラメータの欠陥を補うため、国家統計局は2年間の平均増加率を発表することにした。2年間の平均増加率は基数の影響が相対的に緩和されるため、第1四半期は5.0%増、第2四半期は5.5%増となり、この四半期の数字から中国の回復が徐々に加速していることがわかる。もう1つの重要なパラメータは前期比増加率で、第1四半期の0.6%増から、第2四半期には1.3%増に上昇したことからも、経済回復の原動力がさらに強化されたことがわかる」と指摘する。
上半期の消費状況は?
商務部国際貿易経済協力研究院流通・消費研究所の関利欣副所長は、「上半期の社会消費財小売総額の増加率は安定の中で上昇し、消費への信頼感が徐々に回復し、消費市場には活気が見られた。消費市場には3つの特徴が見られた。1つ目は買い換えのための消費が急増し、上半期の一定規模以上の企業のスポーツ・娯楽用品類、通信機器類、化粧品類の小売額の2年間の平均増加率がいずれも10%を超えたこと。2つ目は都市部消費市場の回復が農村より早く、都市部の消費財小売総額の2年間の平均増加率は農村部を0.4ポイント上回ったこと。3つ目は新型消費の増加率が従来型消費を上回り、実物商品のネット小売額の2年間の平均増加率は16.5%で、社会消費財小売総額に占める割合は23.7%に達したことだ。また、データを見ると、消費のけん引効果が強まっている。上半期の最終消費支出の経済成長への寄与度は61.7%に達し、資本経済の総額を42.5ポイント上回った。同時に見なくてはならないのは、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた飲食業などの接触型消費では、回復プロセスにおいてまだ散発的に感染症の影響がみられることだ」と述べた。
劉氏も、「絶対額を見ると、飲食業には弱点部分を補う流れが見られるが、成長率を見ると、引き続き相対的に低迷している。しかし19年同期に比べれば、第2四半期に成長ペースはマイナスからプラスに転じており、中国の感染症をめぐる経済が弱点部分を補う上で大きな進展を遂げたことがわかる。とはいえ、感染症はまだ存在しており、感染症のこうした不確実性が引き続き中国の飲食・旅行サービスに不確実な打撃を与えていることを見なければならない。そのため、飲食・旅行業の回復にはまだ相対的に長い道のりを歩む必要があるだろう」との見方を示した。
また関氏は、「自動車販売増加率の落ち込みが大きく、消費市場回復の基礎をさらに強化する必要がある」と指摘した。
下半期に消費は回復するか
国家情報センター経済予測部の鄒蘊涵副研究員は下半期を見通して、「消費の促進政策が効果を発揮し、新型消費が新しい需要を喚起するなどの有利な要因に支えられて、消費が持続的に回復し、回復ペースが加速し、マクロ経済の需給のペースが合わないという問題が引き続き解消されていくだろう」と述べた。
関氏は、「下半期には、経済の回復発展の基礎が持続的に堅固になり、国内需要のポテンシャルが絶えず発揮され、消費は引き続き経済成長をけん引する主要な原動力になるだろう」との見方を示した。
さまざまな要因が合わさって消費の回復を支えている。一方では、消費拡大政策が実施され、効果を上げている。「消費の規模拡大・質向上を促進し強大な国内市場の構築を加速することに関する実施意見」は、消費の規模拡大と質向上、強大な国内市場の形成サポートなど6つの面における政策措置19項目の実施促進は、国内市場のポテンシャルをさらにかき立てる上でプラスになるとの見方を打ち出した。同時に、自動車消費政策が持続的に効果を発揮するよう促し、▽ナンバープレートを増やす▽国の環境基準「国6」に対応した車種を購入するよう奨励する▽買い換えを推進するなどの措置を通じて、自動車消費の回復基礎を固めることも打ち出した。また、都市の消費センターを改良・レベルアップし、ナイトタイムエコノミーなどの措置を打ち出すことは、人々の生活ニーズをよりよく満たし、消費のポテンシャルを発揮させる上でプラスになる。
その一方で、新型消費が新しいニーズを喚起した。現在、新型消費の規模が拡大を続け、ネットショッピングが宅配産業の業務量を急増させ、1日平均2億件あまりが常態になった。新型消費関連技術の応用が加速し、5G、人工知能(AI)、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの先端技術が広く応用されている。新型消費の業態モデルが加速的に次々登場し、衣食や日用品など実物消費の分野から、医療や教育、文化・娯楽、旅行、スポーツ、トレーニングなど、より多くのサービス分野へと急速に拡大し、浸透している。同時に、新型消費の主体が急速に育成され、感染症を受けて新型消費に対する消費者の認知度も高まっている。
鄒氏は、「全体として、新型消費は『オンラインとオフラインと双方向の融合』を加速的に実現しつつあり、フルシーンの踏み込んだ開拓の時期に入り、消費全体をけん引する役割がさらに目立つようになった」と指摘する。
下半期の経済はどうなる?
国家統計局の劉愛華報道官(国民経済総合統計司<局>司長)は、「下半期の経済運営に影響する要因から考えると、経済のさらなる回復、さらなる好転を支える要因が徐々に蓄積され、徐々に増えている。まず経済の内在原動力が徐々に強化されている。今年上半期には、国内需要の経済成長に対する寄与度が80.9%に達し、第1四半期より4.9ポイント上昇した。このうち市場での売上が緩やかに回復し、今年上半期の社会消費財小売総額の2年間の平均増加率は4.4%で、第1四半期より0.2ポイント上昇した。投資も持続的に安定回復しており、上半期の固定資産投資の2年間の平均成長率は4.4%で、第1四半期より1.5ポイント上昇し、経済成長を支える国内需要の役割が徐々に強化されていることがわかる」と述べた。
また、マーケットエンティティの信頼感が上昇を続けている。6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.9%で、16ヶ月連続で景気不景気の分岐点を上回った。非製造業景況指数と総合購買担当者景気指数(PMI)も景況改善を示す高い数字となり、マーケットエンティティの今後の経済成長への信頼感や今後の成長活力への信頼感が改善を続けていることがわかる。
グローバル経済は今、回復傾向が続き、外需の増加に向けた基礎を固めている。世界貿易機関(WTO)の最新の予測では、21年のグローバル物品貿易量は前年比8%増となる見込みだ。これは、グローバル貿易の回復の歩みが加速していることを示しており、外需が高い成長率を維持する上でプラスになるとしている。
劉氏は、「総合的なファンダメンタルズについて言えば、需給の循環、市場の信頼感、内需の持続的強化から考えて、下半期の中国経済は持続的な安定回復傾向を維持するだろう」と予測した。(人民網日本語版論説員)
「人民網日本語版」2021年7月21日