昨年末、北京市朝陽区のある軽食店が「困難な人に無料で夕食提供します」という張り紙を貼り出し、話題となった。最近の取材では、北京の多くのレストランがその店に倣い、さまざまな方法で困難な人に無料で食事を提供していることが分かった。北京日報が報じた。
昌平区のある焼肉店の入り口には「人は時に困難な状況に陥るもの。当店では無料で夕食を提供しています。見返りを望んでのことではありません。ただ自分が誰かを助けられるようになった時には、他の誰かを助けてください。店員にAセットを注文してくれさえすれば、勘定する必要はありません。席に座り、そのまま食事してください」と書かれた張り紙が貼られていた。
店に入ると、店長の趙帥さんが、接客しながら、Aセットについて、「かぼちゃのお粥やテンジャンチゲ、ライス、一品料理などが付いていて、若い男性でもお腹いっぱいになるよ」と説明してくれた。
趙さんによると、張り紙は昨年12月中旬に貼り出したものの、この約3ヶ月の間にAセットを注文した人はまだいないという。ある日、宅配便の配達員が通りがかりに、「Aセットは無料で食べられるのか?」と尋ね、説明したうえで、同僚と一緒に食べ来るようにと招くと、「分かった」と返事したものの、ずっと来ていないという。「むやみにただ食いしに来たり、珍しがってそれを注文したりする人がいないことに感動している。みんな、控え目にこの善意を見守ってくれている」と趙さん。
大興区のある牛肉麺店の店内には、「当店は、電子決済サービスでお金を受け取った時に鳴る音を消しています。お金を払わないお客様が店を離れる時に恥ずかしい思いをしないためです。必要な人の助けに少しでもなることを願っています。ファイト!」と書かれた張り紙が貼られていた。
12平方メートルの店内には、キッチンがあり、並ぶテーブルは2つだけと、小さな店であるものの、正午になると、行列ができる人気店だ。店主は、「他のレストランに啓発された。以前、商売がうまくいかず赤字で元手までなくなってしまった時、友人たちが次々に助けの手を差し伸べてくれた。この心温まる善意を一人でも多くの人に伝えたい」と話す。
中国社会科学院社会発展戦略研究院の朱涛副研究員は、「多くの店が困難な人に無料でAセットを提供し、社会に慈善、尊厳、信頼を伝えている。このような社会現象は、北京という特大都市において、社会貢献意識を持つ人が増えているということを示している」と分析する。
そして、「現代社会において、人と人の繋がりが希薄になっている。しかし、それらレストランは、無料のセットを注文する人は、本当に困難に直面している人だと、心から信じている。それも、人と人との間にある信頼関係だ」との見方を示す。(編集KN)
「人民網日本語版」2021年3月17日