先般私は招待に応じて第56回ミュンヘン安全保障会議に出席した。いくつかの印象と体得した事を皆さんと共有したい。(文:傅瑩・前外交副部長<外務次官>、清華大学戦略・安全研究センター長。環球時報掲載)
■中国と競争するという統一的立場の形成を図る米国
米国はミュンヘン安全保障会議を、政策を宣伝し、大西洋両岸の足並みを揃えさせる重要な場として、非常に重視している。しかも米側が共和・民主両党の足並みを揃えさせたのは明らかであり、中国の台頭と「中国の脅威」への対応策を、会議出席における主要な「砲弾」とした。欧州各国による中国・華為技術(ファーウェイ)の5G技術の使用を阻止することが、その核心的要求だ。
ポンペオ氏の演説は長いものではなかったが、うち3分の1の時間を対中批判に費やした。エスパー氏も演説で、ファーウェイを通じて「邪悪な戦略」を遂行していると中国を非難した。米国人はこのように中国に焦点を合わせ、かつファーウェイのような民間テクノロジー企業への非難を際限なく続けたが、会場で得られた支持は限定的だった。中国の内外政策についての米国の非難に追随する者がいたのは確かだが、米中の競争をより理性的に観察しており、結局はどうなのか事実をより多く知ることで、自らの利益にかなう判断の立脚点を見出すことを望んでいる人も少なからずいた。無礼で粗暴な米国の政治屋の態度は一部の出席者の反感も買った。
■チャイナ・ファクターが主要焦点の1つ
今年のミュンヘン安全保障会議の議題は中国が突出しており、明確に中国関連の分科会は11もあった。「中国の挑戦に西側はどう向き合うべきか」「大西洋両岸の関係と中国」「台頭する中国に欧州はどう対処すべきか」「中露が同盟を結んだ場合どうすべきか」「世界の軍備制限への将来の中国の参加」等だ。南中国海、新型コロナウイルスによる肺炎、中国のサイバー政策等に関する専門会合もあった。他のいくつかのフォーラムもテーマ設定では中国に言及していないが、大部分が中国に矛先を向けていた。
私の見たところ、中国の学者の発言や質問に出席者は強く注意を引き付けられ、また認め評価することがしばしばだった。あるドイツの学者は昼食会での私の演説の後「あなたが中国の状況を語るのを聞いて、我々は信頼を構築できると感じた。だが、多くの場合、中国人の意見や重大な問題についての説得力ある説明を直接聞くのが難しい」と語った。