日本と欧州連合(EU)は17日に「経済連携協定」(EPA)に調印した。EU欧州委員会の言い方に従えば、EPAは人口で6億人、国内総生産(GDP)の合計で世界の約3分の1を占める貿易圏を創出することになる。世界の世論では、この協定は保護貿易主義に対抗する双方の意欲を表明するものであり、グローバル多国間自由貿易体制に対する支持であるとの見方が一般的だ。「北京日報」が伝えた。(文:藺睿・西安欧亜学院准教授)
周知の通り、自由で開放的なグローバル貿易環境が最近はさまざまな試練に直面している。最大の要因は、米国の対外経済政策に明らかな転換があったことだ。北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、さらには中国に対する貿易戦争の発動とそのエスカレートぶり、さらには米国の昔からの貿易パートナーに追加関税を課すとたびたび表明していることなど、トランプ大統領が一歩進むごとに、経済のグローバル化や自由貿易とますます乖離していくようにみえる。いわゆる「米国第一」の原則は、実質的には保護貿易主義に姿を変えている。
こうした茶番劇に対し、利益関係者は座して死を待っていられるだろうか。実際、トランプ大統領が就任して米国が保護貿易主義に転向してから、世界の主要エコノミーはさまざまな方法で対処する準備をしてきた。昨年には、EUがカナダ、メキシコとそれぞれ自由貿易協定(FTA)を締結し、中南米諸国、オーストラリア、ニュージーランドもFTA交渉を積極的に進めている。これと同時に、日本も米国の離脱というマイナス条件の下、引き続き参加国に働きかけて米国抜きのTPP(TPP11)で一致するに至った。アジア地域では、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)も整然と秩序よく進められている。このたび日・EUが署名したEPAは、2013年に交渉がスタートし、17年12月に交渉が妥結した。今のタイミングで署名されたのは、一種の態度表明であり、日本の茂木敏充経済再生担当大臣の表現を借りれば、「世界で保護貿易主義的な動きが強まるなか、……EPAは我々が自由貿易の旗手として自由貿易を力強く前進をさせていくというゆるぎない政治的意思をあらためて全世界に示すもの」だ。ここには米国の目下の孤立した状況がより鮮明に映し出されている。
EPAは世界の2大主要エコノミーの間で署名されたもので、EUと日本の経済規模を合わせると世界全体の30%を占め、世界経済にとって非常に重要な意義がある。協定の具体的な条項をみると、EUは全方位的に日本からの輸入品への関税の99%を撤廃するとともに、8年以内に日本車への関税を段階的にゼロにする。日本はまずEUからの輸入品の94%について関税を撤廃し、最終的には範囲を99%に拡大し、コメを除くEUの農産品のほぼすべてに対する制限を撤廃する予定で、過去最大規模の協定になる。試算によると、EPAによってEU各加盟国には60万人、日本には29万人の雇用が生まれ、双方の国民の利益が極めて大きく増加するという。
EPAは一体化の水準も非常に高い。一方で、日本はEUに対して政府調達分野を開放し、日本の公共事業の入札にEU企業が参加できるようになる。さらに開放レベルがは界貿易機関(WTO)の関連合意よりも明らかに高いものになる。また一方で、データの国境を越えた流動という新しい問題で、双方は相手側のデータ個人情報保護システムを相互に承認し、企業と個人によるEPA参加国間でのデータの自由な流動を保障するとした。これにより、協定が発効すれば、保護貿易主義の蔓延を効果的に抑制できるだけでなく、現時点で世界最大規模の自由貿易圏が誕生し、今後の他のエコノミー間の自由貿易協定のお手本になる。
現在のグローバル経済局面において、各国間の経済の相互依存や互恵はもはや常識だ。どの国も、その経済発展レベルや技術の先進的レベル、労働力の充足ぶりがどうであるかに関わらず、グローバル協力から離脱して自国だけ発展することは到底不可能だといえる。(編集KS)
「人民網日本語版」2018年7月20日
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