中国で谷川俊太郎さんというと、宮崎駿監督の大ヒットアニメーション映画「ハウルの動く城」や手塚治虫のアニメ「鉄腕アトム」の主題歌の作詞を担当したことで知られている。実際には、谷川さんは1999年に中国に進出して以降も、詩集や絵本を次々に刊行しており、ノーベル賞受賞者を含む詩人の中で、印刷数、販売数はトップクラスだ。世界の詩壇における成果や中国語の世界での大きな影響力が評価され、2011年に、谷川さんは中国の詩歌の民間最高賞「中坤国際詩歌賞」を受賞。「中国の現代詩歌に一定の啓発を与え、詩人らの創作意欲を高めた」と評価された。(文:王紹葉 蘭州日報掲載)
谷川さんの作品のテーマは「命」、「生活」、「人間性」。そして、生きて、歌うことを静かに追い求め続けており、「生きる」というテーマは何度も表現され、一種の「信仰」にさえなっている。
谷川さんの1952年の詩集「二十億光年の孤独」ですでにその才能が発揮されており、「万有引力とは、ひき合う孤独の力である。宇宙はひずんでいる。それ故みんなはもとめ合う」という詩は、人と人、物と物は「各自独立しており、疎遠な状態」であることを表現している。谷川さんにとって、詩を書く時の最高の状態というのは、何も考えずに、別の次元に行ったような状態だ。そうなると、いろいろな言葉が次々に頭の中に浮かび上がって来るという。そのため、谷川さんは、「詩人にとって一番大切なのは、詩の心を持っていること」とする。
そのような「詩の心」とは、実際に世界や人類に対して、悲しみや同情を感じる多感な心のことだ。谷川さん自身が語るように、詩人とは、宇宙で、または、時間という長い川で、さまよう子供なのだ。彼の詩を通して、はるか遠い未来を見たり、遠い昔のことを眺望したりすることができる。そして、そこでは、歴史上の偉大な詩人たちの声がかすかに聞こえてくるものの、谷川さんの声だけがはっきり聞こえてくる。「ハウルの動く城」の主題歌「世界の約束」は、彼と世界の心との約束を象徴している。「涙の奥にゆらぐほほえみは、時の始めからの世界の約束。いまは一人でも二人の昨日から、今日は生まれきらめく。初めて会った日のように。思い出のうちにあなたはいない。そよかぜとなって頬に触れてくる。木漏れ日の午後の別れのあとも、決して終わらない世界の約束」。
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