江西省南昌市の郊外の湾里区にある国家森林公園。
中国江西省の南昌市の郊外に位置する湾里区にある梅嶺国家森林公園は、一面に青々とした木々が茂り、涼しく、爽やかで、のどかな雰囲気に満ちている。そんな梅嶺の山の上にある立新村の党支部の書記で、林長である高昭梁さん(56)は朝早くから、迷彩服を着て山のパトロールを始める。
高さんはパトロールしながら、林長としての心得を話し始め、「560ヘクタールの山林がある立新村の村民約1500人にとって、山林はまさに暮らしの拠り所。山林を守り、生態を保全するのは、とても重要なことで、村民には美しい山と川を守りながら、豊かな暮らしができるようになってもらいたい」と語った。
立新の林の中には青々とした茶畑が広がり、その周りには樹木が茂っている。高さんによると、林長制が導入された2018年以前、そこは「はげ山」だったという。80ヘクタールの茶畑には、約66.66ヘクタールのスギ林がある。スギは板材として売ることができるため、2006年から山林の経営権が個人に委ねられるようになると、一部の村民が日中にスギを伐採し、夜間にそれを輸送するような生活が始まり、10年間でスギ林の面積は縮小してしまった。
江西省南昌市の郊外の湾里区にある国家森林公園。
しかし、林長制実施以降、政府当局はすぐに通報用の電話番号を公表し、破壊的な伐採を取り締まるようになった。高さんも共産党員幹部が筆頭となって、植樹を行うよう計画し、これまでに1000本以上の苗木を植えてきた。ここ数年、破壊的な伐採を取り締まることができるようになり、「はげ山」に緑の木々が茂るようになった。そして2018年には70%だった立新村の森林率は現在、95%にまで回復した。
森林率が回復する一方で、山火事などに対する災害対策も進められている。高さんはワラを燃やしては肥料にしていた高齢男性の熊さんに会うたびに、「山火事の原因になるのでワラはもう燃やさないように」と注意喚起している。
2019年8月には、墓参りの際、火を使用している人を見かけた森林保全スタッフの陳香妹さんがすぐに高さんに報告し、この突発的な状況に対応した。高さんによると、「普段は村に林長1人、監督スタッフ1人、森林保全スタッフ3人がいる。毎年9月から翌年5月にかけてが、森林火災予防の重要な時期になるため、森林保全スタッフを2人増やす」という。
林長制実施後、森林率が上昇した一方で、イノシシが急増して、農作物が荒らされるという新たな問題も浮上し、「高書記、イノシシがうちの畑のサツマイモを荒らしてしまった」といった訴えも増えた。そのため、湾里管理局農業農村・林業弁公室は今年、村民のために、農作物保険に加入した。農作物が荒らされた場合、保険会社がその被害レベルに基づいて損失を補填してくれるというものだ。
生態が回復すると、村の人々の暮らしも豊かになる。熊端文さんは、山をパトロールする高さんに、自身が経営する農家民宿に招いて、休憩してもらっている。頭が切れる熊端文さんは、数年前に民泊施設を建設したものの、林長制が実施される前は、閑古鳥が鳴いている状態だったという。「山が禿げてしまっていたので、ここに来ても何も見るものがなかった。民泊施設に泊まる人がいなかったので、農業副産物も売れなかった」と振り返る熊端文さんは、「林長制実施後、環境が改善し、民泊施設の周りにシラサギがよく飛来するようになった。そして、南昌市の定年退職した高齢者たちが固定客になった。オンシーズンになると、民泊施設は予約でいっぱいになり、公益林補助金などを含めると、年間世帯所得は17-18万元(1元は約20.1円)になる。林長制に本当に感謝している。我が家の暮らしもどんどん豊かになっている」と喜ぶ。
立新村は観光産業の発展にも積極的に取り組み、村民が美しい山と川を守ることで、豊かな暮らしができるようにしている。村には現在、農家を利用した民泊施設が10軒以上あり、村民の昨年の平均所得は一人当たり1万2000元に達した。
湾里管理局農業農村・林業弁公室の何媛綺主任は、「今後もできる限り緑を増やしていくのと同時に、公益林の管理と保全に重点的に取り組む計画だ。そして、それをベースに、森林資源を活用して林業をめぐる経済を発展させ、森林ウエルネスツーリズムやアグリツーリズムといった生態サービス業の発展を促進し、林業の経済効果を向上させたい」と語った。(編集KN)
「人民網日本語版」2022年6月16日