広東省広州市番禺南亭村小谷圍街を、ゆっくりと歩きながら、目線を下げると、ちょっとしたサプライズを目にすることができる。ふわふわの羊毛フェルトで作られたかわいらしい小さな花が、コンクリートやレンガの壁などに「咲いて」いるのだ。
羊毛フェルトで作った小さな花とボンドを使って、欠けた壁などの補修をしているのは、広州美術学院彫刻・公共芸術学院の学生・羅盛天さんだ。
チューリップやヒナゲシ、キノコなど、どれも手の指ほどのサイズなのがとてもかわいらしい。「街角の修復師」と呼ばれている羅さんは、ぶつかりやすい欠けてしまった壁の角などを、ミニガーデンに「変身」させている。
羅さんは、「『花を植えよう』と思ったのは実はシンプルな理由から。村の中の道は狭く、自分も自転車に乗っている時にしょっちゅう壁の欠けた角にぶつかることがあるし、子供の怪我の原因にもなるから」と説明する。
そして、「花などは家で事前に作っておいて、現場に到着したら、ボンドと超軽量粘土を使って欠けた所を補修して、『花を植える場所』を作る。そして、小さな花を粘土で固定して、グリーンの羊毛フェルトを『植え』て芝生を作り、花の根元をしっかり固定させる」と説明する。
ある時、羅さんは、広東省のスイーツである「糖水」の店の前を通った時に、壁が欠けているのを目にした。そこで壁際に座り込んで、10分もしないうちに、そこに小さな花を「植えた」という。しかし個人経営の店だったので、羅さんは「植え」終えるとそのままその場を去った。ところが思いがけないことに、その店のオーナーはわざわざ手間をかけて羅さんの連絡先を探し出し、「とても幸運なこと。これはお金では買うことができないものだから。『糖水』1ヶ月食べ放題を提供したい!」と連絡してきたという。
そんな糖水の店のオーナーの提案を羅さんは感謝しつつ断ったとし、「僕が届けたいのは温もり。喜んでもらえただけで、大満足」と話す。
羅さんが街の壁を修復する動画は今、ネットで大人気となり、多くのユーザーが親しみを込めて、羅さんのことを「街角修復師」や、「小花侠」と呼んでいる。そして、中国各地で現在すでに100人以上の「小花侠」が活躍しており、「街の修復」に参加する人がますます増えて、羅さんのフォロワーは海外にまで広がっている。
羅さんは、「『フラワーパッチ計画』は、僕の長期創作計画となるだろう。羊毛フェルトで作った小さな花が世界中のあちらこちらに咲いた時には、『スタンプラリーフラワー世界マップ』を作りたい。そして今後、もっとたくさんの街に『小さな花』が咲くことを願っている」と話す。
恥ずかしがり屋の羅さんは、「この計画で、僕の性格も変わった。以前は人と接するのが苦手で、家にひきこもりがちだったけど、今は外に出て、みんなと素敵なことを共有するのが好きになり、僕の人生の可能性もより広がった。小さな花は、多くの人に温もりを届けているだけでなく、僕の心の扉も開けてくれた」と語った。(編集KN)
「人民網日本語版」2022年5月24日