世帯単位の個人所得税徴収、国際的な慣例に合致
中国で新個人所得税法が実施されて2年になる現在、多くの財税専門家は、「個人所得税は『サラリーマン税』となっている」と指摘し、「個人ではなく世帯ごとに税金を徴収することで、サラリーマンの税負担を軽減すると同時に、高所得層の監督管理を強化し、公平な税負担を実現すべき」と提案している。中国青年報が報じた。
ある中国人民政治協商会議委員は以前、広東省広州市のある事業単位(国が社会公益目的のため、国家機関により運営あるいはその他組織が国有資産を利用し運営するもので、教育、科学技術、文化、衛生などの活動に従事する社会サービス組織)に務めている男性の家族を例にし、「妻は働いておらず、夫婦共に一人っ子。両親4人は皆退職金がなかった。つまり子供を加えると家族が7人になるにもかかわらず、働いているのは同男性だけ。男性の給料だけでは家族を養うことができない。一方、同男性の同僚はマイホームや車を買ったり、旅行に出かけたりすることができる」と語ったことがある。
家庭は社会の細胞であり、消費の主要な単位だ。家庭全体の收入水準は、家族の生活の水準に直接影響する。そのため、社会の各成員から一律同額の税金を徴収するというのは形式的には公平だが、各世帯に存在する差が見落とされているため、実質的には不公平になってしまっている。個人課税と比べて、世帯を単位に個人税を徴収することの最大のメリットは、各世帯の実際の支出状況を十分に考慮に入れることができ、現代社会においては個人の所得源が多様化しているという特徴に合致しているため、税引き後の収入の構造が公平になるという点だ。個人所得税制度が比較的成熟している国を見てみると、個人所得税の徴収が消費者物価指数(CPI)の上昇幅などの経済指数と関連付けられ、指数化や動態化などの調整が実現している。
例えば米国では、納税者の申告資格によって、税率や控除額が既婚者用の「夫婦合算申告」と「夫婦個別申告」 、未婚者用の「独身」と「特定世帯主」の4種類の中から1つを選んで適用される。ドイツでは、独身や子供のいない既婚者、子供のいる既婚者などの基本状況以外に、子供の教育費や家庭内の特殊な支出の有無など家庭の負担を基に、税金が細かく計算される。英国では、夫婦は「個人」か「世帯」かのどちらかの単位を選んで、個人所得税を納めることができる。また、日本では、「所得控除制度」が実施され、納税者本人の生活に最低必要な額や扶養家族を養うために最低必要な額には所得税がかからない。
「世帯」を単位に個人所得を徴収するには、かなりの手間がかかるが、「実行不可能」というわけではない。多くの専門家や学者、官僚は頻繁に「国際的な慣例に合致させる」と口にするが、「世帯を単位に個人所得税を計算する」という点で、多くの国は良い模範を残しており、中国も「慣例に合致させて」みてはどうだろうか。
所得分配制度を改革し、調和のとれた社会を構築するためには、合理的な所得分配制度を通じて、社会の富を公平に分けなければならない。2006年、ある中国人民政治協商会議の委員は「個人所得税の納税申告を世帯を単位にして行う提案」を提出している。また、報道によると、政府の関連部門は既に、世帯を単位に個人所得税を徴収するために、中国全土の地方税務システムを整えている。同問題は既に社会でも認識されるようになっている以上、単なる「うわさ」に終わらせては決してならない。(編集KN)
「人民網日本語版」2013年9月10日