動力電池の中国におけるリサイクルの旅

人民網日本語版 2024年04月30日10:48

現在、中国は動力電池産業のトップランナーで、市場規模は8年連続して世界一となり、世界で産業チェーンが最も整い、規模が最も大きな動力電池産業体制を構築している。このように非常に大きな基数の下、使用済み動力電池はどのように処理されるのか。湖北省の武漢市と荊門市で取材を行い、動力電池のその後を追跡し、リサイクルのプロセスを調査した。

武漢のある移動交通サービスプラットフォームを取材すると、電池容量の減りが早い新エネルギー自動車数台について、自動車メーカーのアフターサービス担当者が格林美股份有限公司の動力電池回収担当者に連絡を取っていた。

その翌日、回収担当者がやって来て、取り外された動力電池を絶縁膜で何重にもくるみ、格林美(武漢)都市鉱山循環産業パークへ運んでいった。

動力電池の積まれたトラックの後についてパークへ行くと、作業場に運ばれた電池は、自動化設備の中で迅速に電池容量の計測が行われた。格林美グリーン産業(武漢)イノベーション研究院の別伝玉副院長は、「容量が比較的大きいものは武漢で再利用し、かなり減少しているものは荊門にあるパークに送って処理する」と説明した。

格林美の動力電池資源化分解ライン。

格林美の動力電池資源化分解ライン。

格林美公司が回収処理する動力電池は、全国の使用済み動力電池のうち約1割を占める。同社はこれまで使用済み自動車の回収を主業務の1つとし、多くの自動車メーカーと安定した協力ルートを構築してきた。新エネ車の発展にともなって、使用済み動力電池の回収分野にも順調に乗り出した。

回収できるのは使用済み動力電池だけでなく、生産過程でセルに加工されなかった廃棄物も含まれる。

格林美荊門パークからさほど遠くない場所にある湖北億緯動力有限公司の動力電池工場を取材すると、新しいリチウムイオン電池が次々に秩序よくラインオフしていた。

恵州億緯鋰能股份有限公司は、リチウムイオン電池生産のリーディングカンパニーの一つだ。前出の億緯の電池工場は同社が投資建設したもので、今では華中地域で最大規模の動力電池・蓄電池の生産拠点へと発展した。リーディングカンパニーに牽引され、100社近い関連企業が集まって川上から川下に至る電池産業チェーンを形成している。

格林美と億緯鋰能は戦略的協力合意を結び、億緯の動力電池生産で出る廃棄物の回収に方向性を定め、これを処理して原材料としたものを再び電池工場に届けている。このような回収モデルは「マテリアルリサイクル」と呼ばれている。

回収ははじめの一歩に過ぎない。使用済み動力電池のリサイクルの道はスタートしたばかりだ。

格林美武漢パークの動力電池カスケード利用工場では、測定して容量が大きかった電池は作業台へ送られ、モジュールやセルなどに分解され、さらに小型自動運搬車で加工生産ラインへ送られる。作業員によると、こうしたセルは再構成され、家庭用エネルギー貯蔵キャビネットが製造されるという。

「カスケード利用とは何か」との質問に対し、工場の作業員は「使用済み動力電池の中には自動車の動力として使うには十分ではないが、分解して再構成すれば、低速の電動自転車、通信基地局、エネルギー貯蔵キャビネット、ソーラー街路灯などへの応用が可能なものがある」と説明した。

格林美武漢パークの駐車場付近で、工業・商業一体化型のエネルギー貯蔵キャビネットをいくつか見かけた。前出の別氏は、「1セットのエネルギー貯蔵キャビネットはリサイクルされた動力電池パック数十個で構成され、一般的に8年から10年の連続使用が可能だ」と述べた。

容量が著しく減少した電池もリサイクルされる。電池生産時の廃棄物や使用済み電池からリチウム、コバルト、ニッケルなどの金属材料を取り出し、電池の生産に再利用する。リチウムを例にすると、回収率が1%増加するごとに、廃棄された動力電池1トンあたりの再利用価値が数千元(1元は約21.7円)上昇するという。

江蘇省贛州市定南県の贛州竜凱科技有限公司の作業場で、産業用ロボットが廃棄されたリチウムイオン電池を解体処理する様子。(撮影・鍾傑。写真提供は人民図片)

江蘇省贛州市定南県の贛州竜凱科技有限公司の作業場で、産業用ロボットが廃棄されたリチウムイオン電池を解体処理する様子。(撮影・鍾傑。写真提供は人民図片)

第三者の回収処理機関と協力する以外にも、自動車メーカーの中には自前の電池回収事業を展開するところもある。

武漢の東風鴻泰循環経済産業パークの生産現場を取材すると、カスケード利用の電池を搭載した電動フォークリフトがあちこち動き回っていた。作業員によると、うちで開発したこのカスケード利用の電池は従来の鉛蓄電池に比べて重量が軽く、動力が強く、航続距離が長く、1回充電すれば8時間使用できるという。

東風汽車の子会社である東風鴻泰持株集団有限公司の関係責任者は、「第三者の回収処理機関に比べ、自動車メーカーは電池の状態などの情報をより正確に把握している」と説明した上で、「動力電池の大量廃棄により、供給元が増加し、カスケード利用の電池製品の開発・利用コストが大幅に低下する見込みだ」と予想した。

工業・情報化部(省)のまとめたデータによれば、中国にはすでに動力電池回収サービス拠点が1万ヶ所以上設置されている。昨年の新エネ車の廃棄動力電池の総合再利用量は22万5000トンに達した。

関連の研究機関の予測では、2025年には中国で廃棄される動力電池は82万トンに達するという。「第14次五カ年計画工業グリーン発展計画」は、25年までに整った動力電池リサイクルシステムを構築することを掲げている。より多くの動力電池が、これからリサイクルの旅をたどることになるだろう。(編集KS)

「人民網日本語版」2024年4月30日

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