「虹を織る女性」が織り上げるカラフルな織物「独竜毯」
霧雨が煙る中国とミャンマーの国境の町である雲南省怒江州貢山県独竜(トールン)江郷では3月27日、顔に刺青を入れた独竜(トールン)族の女性・太恰さん(81)が織機の前に座り、7色の綿糸を使って、トールン族伝統の織物「独竜(トールン)毯」を織っていた。中国新聞網が報じた。
中国の少数民族の一つであるトールン族の人口はわずか約7000人で、うち約4000人がトールン江郷で暮らしている。トールン族は「直過民族」(新中国成立後に原始社会から社会主義社会へ直接に移行した民族)で、全員が貧困を脱却し、飛躍的な発展を遂げている代表的な民族だ。
トールン族博物館で展示されているトールン毯(撮影・李嘉嫻)。
トールン江郷にあるトールン族博物館には1923年に撮影されたトールン族の写真が展示されている。写真に映っている男性は髪がボサボサで、裸足、そして日中は服に、夜は布団になる「トールン毯」を身にまとっている。
トールン江郷の宣伝幹事の楊時平さんは、「トールン毯は最初、麻100%の糸を使って織り上げていた。その頃はそれが手に入る唯一の材料だったからだ。昔は1枚のトールン毯を織り上げるのに1ヶ月以上もかかっていた」と紹介する。
地形の関係で、1年のうち半年は雪が積もり、山から出ることができなかった以前のトールン江郷は、外部と遮断され、物資が不足し、発展が遅れていた地域だった。
しかし、1999年に歴史的変化を迎え、トールン江道路が開通。中国において道路が通っていない最後の少数民族が暮らす地域という歴史が幕を閉じた。それ以降、他の地域から多種多様な糸がトールン江郷にもたらされるようになった。そのため、トールン族の女性は色鮮やかな綿の糸やウールの毛糸、麻などを組み合わせて使うようになり、トールン毯も虹のようにカラフルになった。そして、それが、ソファーやベッドのカバー、衣服として使われるようになっていった。
トールン毯を織る顔に刺青を入れたトールン族の女性・太恰さん(撮影・李嘉嫻)。
2つ目の大きなターニングポイントは10年前に到来した。長さ約7キロのトンネルが貫通し、高黎貢山の東側と西側が結ばれたのだ。それにより、トールン江郷の山が閉鎖されていた歴史は完全に終わりをつげ、この「秘境」が多くの人に知られるようになった。トールン江景勝地は今、国家4A級景勝地(5Aが最高)に指定され、トールン族の女性は、「虹を織る女性」と呼ばれるようになっている。
2015年、上海のあるアパレル企業がトールン江郷を訪れ、トールン毯に魅了され、トールン族の女性と提携することを決めた。そして、女性がトールン毯を織る工房を設置し、受注生産を始めた。その後、ウールやシルクといった各種糸が宅急便でトールン江郷にまで届けられ、トールン族の女性はそれを使ってトールン毯を織り、上海に送り返すようになった。そしてトールン毯は加工を経て、枕やスカート、ショールなどとして、英国やオランダなどの欧州諸国に輸出され、高い人気を集めるようになっている。
トールン毯を織る仲間と工房で言葉を交わすトールン族の女性・碧玉花さん(写真右、撮影・李嘉嫻)。
2022年12月、「トールン毯を織る技術」は雲南省の省級無形文化遺産代表性項目に認定された。そして、今年3月、トールン江郷は、トールン毯合作社を立ち上げ、すでに女性176人がメンバーとなっている。さらに、同郷は各種トレーニングやコンテストを展開し、トールン毯を織る文化の影響力が拡大するよう取り組んでいる。現在、同郷の女性1543人のうち、約500人がトールン毯織りに従事し、トールン族の女性が地元で働いて増収を実現できるようになっている。(編集KN)
「人民網日本語版」2024年3月29日
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