小さな街のパンが中国全土で人気、売上高年間約6000億円
小麦栽培も小麦粉生産もしていないのに、パンの売上高が年間300億元(1元は約19.9円)という街が江西省にある。それは、中国の「パンの里」と呼ばれる資渓県で、人口は13万人と少ないものの、うち約4600世帯が百万長者で、約160世帯が千万長者、約20世帯が億万長者。4万人以上がパン業界に従事しており、農民の純所得源の60%がパン産業となっている。中国新聞社が報じた。
資渓県の行政中心地。画像は資渓県党委員会宣伝部が提供
「資渓県」を知らない人でも、中国に住んでいるなら、同県で作られたパンを、きっと一度は食べたことがあるはずだ。鮑師傅や瀘渓河、詹記といった有名な中国伝統菓子のブランドの発展はいずれも資渓県と関係がある。
鮑師傅の菓子。撮影・朱瑩
資渓パンの起源
江西省東部、武夷山脈の西の麓に位置する資渓県は、森林率が87.7%で、中国の「パンの里」のほかにも、「中国の天然酸素バー」、「全国エコツーリズム大県」などと呼ばれている。
資渓県のパン、菓子、パンフィリングを生産する工場。画像は資渓県党委員会宣伝部が提供
小麦の生産地でもない山間部の街から、わずか数十年の間に、4万人以上からなる「資渓パン軍団」が生まれ、中国各地へと広がっていったのはなぜなのだろうか?
資渓パンの起源は、1980年代後期に遡ることができる。1987年秋、資渓県の退役軍人2人が、部隊で習得したパン作りの技術を活かすために、まず他の地域で起業。資渓県出身者が開いたパン屋の1号店となった。そして、それが「資渓パン」のルーツとなり、経験やパン作りの技術が無償で資渓出身者に次々と伝えられ、同県のパン産業は拡大の一途をたどってきた。
パン屋でパンを頭にのせて写真を撮る女の子。撮影・鄔高萍
パン産業は、資渓県で目を見張る成長を遂げているだけでなく、中国各地でも花開き、従事者が増え続け、産業は拡大の一途をたどっている。現時点で、資渓パンの店舗は中国全土の1000都市以上で1万6000軒以上展開されているだけでなく、海外にも進出しており、生産額は年間約300億元に達し、県内の農民の純所得源の60%がパン産業となっている。
トータル産業チェーンを誇る資渓パン
焼きたての食パン。画像は資渓県党委員会宣伝部が提供
2019年8月、資渓県で、敷地面積約5.7ヘクタール、総投資額約6億元のパン中央工場プロジェクトが着工。2021年10月に完成して、一部でテスト生産が始まった。「本社拠点+大型コールドチェーン物流+店舗販売」という運営スタイルが採用され、直営店と加盟店が展開され、「資渓パン」ブランドのリソース集約が加速している。
パン加工工場で作業をする作業員。画像は資渓県党委員会宣伝部が提供
その他、産業チェーンを拡大し、パン食品産業集積を加速させるべく、資渓県はハイスタンダードな資渓パンテクノロジーパークを建設し、小規模・零細企業が生産設備などに投資しなくてもすぐパーク内に入居できるようにしている。
パン文化館。画像は資渓県党委員会宣伝部が提供
2021年12月、南昌大学国際食品イノベーション研究院・資渓食品研究院、撫州職業技術学院・資渓パン産業学院、資渓パン技工学校が、資渓に設立された。
ベーグルを作るパン職人。撮影・劉占昆
資渓県で毎年開催されている「パン文化フェスティバル」は、中国全土のパン業界を盛り上げる一大イベントで、全国各地からパン職人が集まって、その腕を競い合っている。
資渓県の行政中心地の街中を歩くと、至る所でパン屋を見かけるうえに、パン文化館もあり、産業と都市が融合しながら発展する新業態が作り出されている。
資渓パンは中国各地で大人気となっている。中国の1000都市で展開されている資渓パンの店は今、東南アジアやロシアへも進出している。(編集KN)
「人民網日本語版」2023年8月4日
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