北京人民芸術劇院の舞台「白鹿原」、7年ぶりの再演
中国陝西省白鹿村を舞台に清朝末期から新中国にかけて2つの大家族旧家が3代にわたり繰り広げた恩讐を描く長編小説「白鹿原」の舞台劇が27日、2006年の初演以来7年ぶりに北京の首都劇場に戻ってきた。女性主人公に扮する盧芳(ルー・ファン)のほか、主演の郭達(クオ・ダー)やプー・ツンシンらが、永遠に語り継がれる「白鹿原」の愛と憎しみが織り成す恩讐の物語を演じている。旧版と同様、新版にも国の無形文化遺産に指定されている陝西省の古典芸能「陝西老腔」が取り入れられている。「北京日報」が伝えた。
1993年に小説「白鹿原」が発表されてから20周年を迎えた今年に、「白鹿原」の舞台が再演されたことは非常に意義深い。この舞台を再度演じるために多くの仕事のオファーを断ってスケジュールを調整した陝西出身の郭達は、北京人民芸術劇院の役者たちと最共演を希望したことは、ある種の使命感によるものだと語る。「これは陝西省を描いた作品であるにもかかわらず、陝西省のいずれの劇団も演じていない。北京人民芸術劇院の役者たちが陝西省の方言を使って演じている。これは大変勇気がいることであるし、とても大きな重圧がかかるものだ」と語る。舞台前、郭達とプー・ツンシンが共有していた化粧室で、ちょうど舞台用の髭をつけ終わった郭達は、プー・ツンシンに向かって手を差し出し、あいさつした。「陝西人の代表として、北京人民芸術劇院の役者に敬意を表さなければいけない」と語った。
作家・陳正実による原作に対して、郭達はある異なる思いを持っていた。毎回の稽古では、まず先に小説を読み返して人物のキャラクターを理解し、細かい部分の役作りを行った。今回の再稽古では、原作の小説をまたもう一度読み返し、1カ月前から役作りを始めた。するとまた新たなる発見があったという。旧版のシナリオの中には、郭達が演じる鹿子霖役に「私は監獄に入っていた」というセリフがあった。7年前の初演の際、郭達は原作を読んだことで、鹿子霖は2年間監獄に入っていたことに気付き、セリフを「私は2年間監獄に入っていた」に変えたのだという。今回、さらにもう一度原作小説を読むと、鹿子霖が監獄に入っていた時間は正確には2年8カ月であることに気付き、再びセリフを変えた。ここから見て、「以前は、思っているほど詳細に読み込んでなかったことに気付いた」と郭達は言う。原作を詳細に読めば読むほど、演じるキャラクターがより立体的に浮かび上がってきた。
初演の際には、郭達は鹿子霖の役を非常にスケベで下品な人物として演じたが、今回はこの役についてより細やかに役作りを行ったことで、最低限の道徳心を持ったキャラクターとして演じているという。
一方、北京人民芸術劇院の役者たちにとって、陝西の方言を地元民らしく自然にしゃべることは依然として非常に大きなハードルだった。この点に関して、郭達は非常に寛大に評価しており、「非常にうまくなった」と語っているが、実際は舞台上で役者たちが発するセリフにはまだ少しぎこちなさが感じられる。それぞれのセリフをなめらかに話そうとすると、やはり人民芸術劇院の役者独特のはっきりとした標準的な発音が出てしまう。しかし、プー・ツンシンはこれについてあまり大したことではないと考えている。「我々に方言をしゃべろうとする意図と努力さえあれば、細かい違いについて観衆は恐らく気にしないだろう」と語る。
実際、白嘉軒役を演じるプー・ツンシンは初演の経験があることから、多くの出演俳優の中でも最も陝西の方言を話すのが上手いといえる。方言という精神的負担がなくなった舞台上のプー・ツンシンは非常に落ち着いており、心の余裕が演技に現れている。プー・ツンシン自身も「以前はまず役柄や心理状態を模索していたが、今は当初の慌しさはなくなり、より深く役に入り込めている」として、「これこそが舞台の良さだ。以前欠けていた部分を補足することができる」と語った。
今回の「白鹿原」の舞台は連続19公演。チケットは公開初日までに半分以上が売れ、興行収入はすでに310万元(約5177万円)に達している。
小説「白鹿原」は、中国近代文学を代表する作家・陳忠実が6年の歳月をかけて書き上げた代表作。陝西省の「仁義村」と称する白鹿村を舞台とし、清朝末期から新中国にわけて白家と鹿家の2つの大家族旧家の3代にわたる恩讐を史実的に描いた長編小説。1997年、中国の権威ある文学賞・茅盾文学賞を受賞。王全安(ワン・チュエンアン)監督による映画「白鹿原」は第62回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を獲得している。(編集MZ)
「人民網日本語版」2013年5月29日