湾岸アラブ諸国4ヶ国の外相と湾岸協力会議(GCC)の事務局長が現在、中国を訪問している。中国としては、新型コロナウイルスのパンデミック発生後、初めて受け入れる複数国からなるハイレベル外交代表団となる。そして湾岸協力会議としても、加盟国外相が集団で外国を訪問するのは初めてであり、対中関係を非常に重視していることの表れだ。今回特別な時期に訪問を行った動機と、中国・湾岸諸国関係への推進作用として、以下が挙げられる。(文:丁隆・上海外国語大学中東研究所教授。環球時報掲載)
まず、発展戦略の連携が、双方関係の発展に大きな展望を開いた。中国と湾岸諸国との間には、大きな経済的補完性がある。中国にとって湾岸諸国は最大の石油輸入先であり、中国の工業製品と適正技術は湾岸諸国の需要を満たしてきた。2021年、中国とアラブ諸国との貿易額は3000億ドル(1ドルは約115.9円)の大台を突破し、中国と湾岸諸国との貿易額も初めて2000億ドルを超え、中国は湾岸諸国にとって最大の貿易パートナーとなった。
経済・貿易協力を発展戦略の連携にまで高めることは、すでに中国と湾岸諸国のコンセンサスとなっている。湾岸諸国から見ると、中国は彼らのインフラ整備、工業化、経済モデル転換の実現を支援する能力と意向を持つ唯一の大国だ。このため彼らは「一帯一路」(the Belt and Road)イニシアティブやアジアインフラ投資銀行など新たな融資プラットフォームに強い関心を示し、自国の発展計画と「一帯一路」イニシアティブとの連携を積極的に図り、中国の投資を呼び込み、自国の経済モデル転換に役立てようとしている。中国と湾岸諸国は、エネルギーの川上・川下産業、製造業、ハイテク、新エネルギーなど新興分野で踏み込んだ協力を実施するとともに、第三国市場協力の検討にも入っている。
次に、湾岸諸国は同盟国を多様化する戦略を実施している。米同時多発テロ以降、湾岸諸国と米国の同盟関係は打撃を受け続けており、湾岸諸国は米国のみに依存するリスクを回避し始めるようになった。近年、中国と湾岸諸国との戦略的協力が試練に遭遇することがあった。中国・湾岸諸国関係の外部変数である米国が、双方間の戦略的協力を深刻に妨害したのだ。しかし、湾岸諸国は米国の圧力に屈することなく、関係する問題において中国側を断固として支持した。今回の訪中は、湾岸諸国が中米間の駆け引きのカードと成り果てることを望まず、対中関係の発展における立場を改めて明らかにするものと解釈できるだろう。
新型コロナウイルスのパンデミックの下での湾岸諸国外相の訪中は、中国と湾岸諸国の実務協力と戦略的協力が勢いよく発展していることを物語っている。当然、中国と湾岸諸国の関係も、制度化が十分に進んでいないという問題を抱えている。従って、今回の訪問で、双方は戦略対話メカニズムや自由貿易協定(FTA)交渉を再開し、今年サウジアラビアで開催される第1回中国・アラブサミットに向けた準備を行うことになる。さらに重要なことに、今回の訪中は、湾岸地域の冷戦化を企てる者や勢力に対して、中国・湾岸諸国協力への妨害はすでに情勢に合わないという明確なメッセージを送ることにもなる。(編集NA)
「人民網日本語版」2022年1月11日