量子インターネットの未来の応用シーンはどんなもの?

人民網日本語版 2020年10月22日14:51

情報の検索、電子メールの送受信、WEB会議……私たちの日常生活はすでにインターネットと切り離せなくなっている。インターネットの先駆けとされる米軍のARPANET(アーパネット)が誕生してからすでに半世紀が過ぎ、最近は量子インターネットという新興技術の名前が米国や欧州の科学技術戦略プランの中に度々登場するようになった。量子インターネットは現在のような相互接続する世界にどのような破壊的変化をもたらすだろうか。将来は従来のインターネットに取って代わる可能性があるだろうか。新華社が伝えた。

関連分野の専門家によると、現在から今後5-7年ほど後までの間、量子インターネットは量子通信技術によって従来のインターネットにエネルギーを注入することが主な応用になり、国家安全保障、金融セキュリティ、その他の安全な通信への依存度の高い分野に応用が集中するだろうという。中国の百度研究院量子コンピューター研究所の段潤堯所長は、「この面での代表的技術はやはり量子鍵配送(QKD)技術だ。これから、量子もつれスワッピングと量子計算などの技術が徐々に成熟するのにともなって、量子クラウドサービスもますます普及し、一般のユーザーでも長距離で大規模な量子コンピューターを使用できるようになるだろう」と述べた。

また量子インターネット技術を利用すればこれまでにない真新しいセンシング技術が実現する可能性があり、軍事や国防の分野で非常に大きな応用のポテンシャルを備えることになる。北京理工大学物理学院量子技術研究センターの尹璋■(王へんに奇)教授は、「量子インターネットはセンシング感度の極めて大きな向上をもたらすことができる。たとえば量子インターネットによって実現した標準時を全地球測位システム『北斗』で利用すれば、時報や測位の精度と安全性を極めて大幅に高めることができる」と説明した。

段氏は、「だが、全面的に連結した大規模な量子通信を実現するには10年以上かかり、量子コンピューターの実際の進展状況に大きく左右されることになるだろう。私たちは量子コンピューターの能力と応用についてさらに理解する必要があり、将来のインターネットの応用について『大胆に想像力を働かせる』必要がある。たとえば、遠隔で医療サンプルの精度の高いサンプリングと伝送が可能になり、医療資源などの物理的空間における配置の制約をある程度解消することが可能になる。また潜在的な応用の可能性として、通信ネットワークの範囲を地球の外側の宇宙にまで広げ、量子計算と量子通信技術の力を借りて宇宙の謎をより多く解くことも考えられる」と述べた。

量子インターネットの構築を急ぐ米欧

米国と欧州は量子インターネットの上述した重大な戦略的意義を意識しており、率先して政府レベルで関連計画を打ち出している。

欧州連合(EU)の研究計画「量子技術フラッグシップ」の公式サイトが今年3月に発表した「戦略的研究アジェンダ」(SRA)によると、今後3年間で欧州地域において量子通信ネットワークの構築を推進し、既存のデジタルインフラを整備・拡張し、未来の量子インターネットの発展に向けた基礎を打ち立てるという。

今年7月、米国エネルギー省は量子インターネットの開発戦略の青写真を発表し、米国が世界の量子競争でトップレベルを確保し、通信の新たな時代を牽引するとの構想を打ち出した。この青写真は同省傘下の国立実験室や大学、工業界の関係者が今年2月にニューヨークで制定したもので、その内容には実施する必要があるコア研究、プロジェクト、設計のボトルネック、短期間で達成すべき目標が含まれる。同省傘下の国立実験室17ヶ所が連携して将来の量子インターネットの基幹ネットワークを構築した後、大学や民間企業も徐々に仲間に加わるという。

尹氏は、「このロードマップは米国国家の量子戦略の産物だ。米国政府にとって、量子インターネット実現の意義は、1969年に米国防省国防高等研究計画局(DARPA)が資金を拠出して世界初のネットワーク『アーパネット』を構築したことに比肩するものだ」と述べた。(編集KS)

「人民網日本語版」2020年10月21日

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