中国のM2が100兆元台に、インフレの懸念は? (3)
清華大学中国・世界経済研究センターの李稲葵主任は、「M2がGDPとの間に固定的な比例関係を持たなければならないとする、経済学の理論は存在しない。M2は残高の指標であり、一国が蓄積した貨幣供給量を反映する。GDPは成長を示す指標であり、一定期間内の経済活動における生産・投資・消費が創造する付加価値を反映する。これらの経済活動に必要な中間取引は、統計に盛り込まれない」と語った。残高の指標と成長の指標を比較する意義は余りない。ましてや貨幣残高が反映する経済活動に含まれる範囲はより広範で、特に土地・不動産などの取引で大量の貨幣残高が発生するが、より多くの付加価値を創出するとは限らない。
◆インフレとの必然的な関連性はなし
M2残高の膨張はインフレの基礎的な条件であるが、必ずしもインフレを引き起こすとは限らない。
中国人には貯蓄の習慣がある。また社会保障システムが整っておらず、投資手段が単一的といった要素が加わり、住民の貯蓄傾向が強く、住民による貯蓄額が40兆元を上回っている。このM2残高の40%に相当する貨幣は、銀行預金による利子の獲得、もしくは固定収益商品への投資に充てられることが多い。
一部の貨幣が銀行システムから流出したとしても、物価を押し上げるとは限らない。商品の生産量が不足しており、一般人の多くの需要が満たされていない場合、人々は貨幣を手にすると今がチャンスとばかりに消費に走り、インフレが形成されることになる。李主任は、「中国の食糧生産量は9年連続で増加しており、鉄・コンクリート・家電・自動車などの各業界に余剰生産能力が存在しているため、需要けん引型のインフレは生じにくく、往々にして生産コスト増によるコスト転嫁型の物価上昇が生じる。つまり問題はこの面に生じやすく、需要の面には生じないことになる。農産物の価格の短期的な引き上げは、伝統的な意味のインフレではなく、M2残高の膨張により短期間内にもたらされる一部の操作だ。国家経済と国民生活に関連する大口商品には、M2の膨張による大規模・持続的なインフレが生じていない」と分析した。
李主任は、「M2が住宅価格を押し上げるためには、二つの条件が必要になる。一つ目は大量の貨幣残高、二つ目は価格上昇予想だ。これらの条件が整えば、人々は貨幣を住宅購入に使用し、住宅価格を引き上げることになる。当然ながら、M2が住宅価格を押し上げるかについては、社会の投資意欲を見る必要がある」と語った。
李主任は、「投資の属性から見ると、住宅と株はいずれも資産だ。M2残高が膨張している中、なぜ住宅価格だけが高騰し、株式市場が低迷しているのだろうか。これは社会の投資意欲が重要な要素であることを裏付けている。不動産そのものは不足しており、供給量が需要を下回っており、受託価格高騰の予想が生まれている。一方で中国の株式市場の基本制度には依然として不備があり、投資家の投資意欲が低い。この異なる二つの意欲が、住宅市場の活況と株式市場の冷え込みを形成している。この現象はまた、M2残高の膨張が資産価格を押し上げるとは限らないことを示している。今後の不動産抑制策が、住宅価格高騰の予想を覆すことがあれば、不動産市場も株式市場と同じく、M2がどれほど膨張しようと住宅価格が押し上げられることはない」と述べた。(編集YF)
「人民網日本語版」2013年5月8日